「刺身を食べたら激痛…それ、アニサキス症かも?」症状・治療・予防を医師が解説

お刺身やお寿司を食べた翌日、急にお腹がズキズキ痛くなった…。


「食あたりかな?」と思っても、原因が実はアニサキス症という寄生虫感染のことがあります。

アニサキスはサバ・アジ・イカ・サーモンなどの魚介類に潜む小さな寄生虫で、人が食べると胃や腸に噛みつき、突然の激しい腹痛や吐き気を起こします。

先日、健診の胃カメラ検査を施行していると患者さんの胃でアニサキスが粘膜に刺さっていました。

症状は全くなかったみたいで、こんな事もあるんだなぁ~と感じることがありました。


ニュースやSNSで話題になることも多いですが、実際には誤解されている点も多く、「ワサビで死ぬ」「酢で大丈夫」などは正しくありません。

この記事では、消化器外科医の視点から
アニサキス症の症状・治療・予防法を解説します。

🩺 アニサキス症の症状・診断・治療

症状

アニサキス症は、魚介類に潜む寄生虫「アニサキス」が胃や腸の壁に噛みつくことで起こります。
典型的な症状は以下のようなものです。

  • 胃アニサキス症:食後数時間以内に突然始まる激しいみぞおちの痛み、吐き気、嘔吐
  • 腸アニサキス症:食後数十時間〜数日後に起こる強い下腹部痛、腸閉塞に似た症状

痛みは「差し込むように強い」のが特徴で、食中毒や胃潰瘍と間違われることもあります。


診断

最も確実な方法は**内視鏡検査(胃カメラ)**です。
胃の粘膜に白い糸のようなアニサキス虫体が噛みついているのを直接確認できます。

  • 胃カメラで虫体を発見 → その場で除去可能
  • 腸アニサキス症の場合 → CT検査や超音波で腸のむくみを確認することがあります

血液検査で「アニサキス特異的IgE抗体」を調べる方法もありますが、診断の決め手にはなりません。


治療

  • 胃アニサキス症:胃カメラで虫体を取り除くと、痛みはその場で劇的に改善します
  • 腸アニサキス症:内視鏡で届かないことが多いため、自然に死滅するのを待ちつつ、点滴や鎮痛薬で症状を和らげます

抗生物質や市販の胃薬では効果がありません。
「自然に治ることもある」とはいえ、強い腹痛がある場合は早めに受診することが大切です。

🐟 そもそもアニサキスって何?

アニサキスは**魚やイカに寄生する寄生虫(線虫)**の一種です。
白く細長い糸のような形をしていて、長さは約2〜3cmほど。普段は魚の内臓に潜んでいますが、鮮度が落ちると筋肉(つまり刺身の部分)に移動することがあります。

感染経路

人がアニサキスの幼虫を含んだ魚やイカを生で食べることで感染します。
感染といってもアニサキスが体内で成長するわけではありません。人の体の中では成虫になれないため、胃や腸の壁に噛みついて炎症を起こすのが特徴です。

寄生している魚の例

  • サバ
  • アジ
  • イワシ
  • サケ
  • イカ

特にサバやアジはアニサキス症の原因として多く報告されています。

世界と日本の事情

アニサキス症は世界的にも報告されていますが、とくに日本で多い病気です。
その理由は、日本人が生魚(刺身や寿司)を食べる機会が多いため。厚生労働省の報告によると、食中毒の原因の上位に入るほど頻度が高いのです。

✅ アニサキス症の予防法とよくある誤解

アニサキス症は、正しい知識があればしっかり予防できます。


「生魚を食べたら必ずかかる」というわけではなく、調理や保存の工夫で防ぐことが可能です。

1. 確実な予防法

  • 加熱する
    60℃以上で1分以上加熱すればアニサキスは死滅します。焼き魚や煮魚は安心して食べられます。
  • 冷凍する
    -20℃以下で24時間以上冷凍すると死滅します。
    スーパーや回転寿司チェーンで提供される多くの魚は冷凍処理されているため、リスクは低めです。
  • 新鮮な魚を選ぶ
    アニサキスは内臓から筋肉に移動するため、釣った魚はすぐに内臓を取り除くとリスクを下げられます。

2. よくある誤解(デマ)

  • 「ワサビやショウガで死ぬ」 → ❌
    残念ながら効きません。ワサビやショウガは殺菌作用はありますが、アニサキスを殺すほどの効果はありません。
  • 「酢でしめれば大丈夫」 → ❌
    酢や醤油、塩でもアニサキスは死にません。しめ鯖でも生き残ることがあります。
  • 「噛めば大丈夫」 → △
    よく噛めば感染リスクは下がりますが、アニサキスは細長く弾力があるため、完全に噛み切るのは難しいです。

3. 安心して魚を楽しむために

  • 刺身や寿司は「冷凍処理済み」や「養殖魚」を選ぶと安全性が高まります。
  • 飲食店で提供される刺身の多くは、食品衛生法に基づき冷凍処理がされているので、極端に心配する必要はありません。

方法効果の有無ポイント
加熱(60℃以上で1分以上)◎ 確実に死滅焼き魚・煮魚なら安心
冷凍(-20℃で24時間以上)◎ 確実に死滅スーパーや回転寿司はほとんど冷凍処理済み
新鮮なうちに内臓を除去○ 効果あり釣った魚はすぐに内臓処理することでリスク低下
ワサビ・ショウガ✖ 効果なし殺菌作用はあるがアニサキスは死なない
酢・醤油・塩✖ 効果なししめ鯖でも生き残ることがある
よく噛む△ 不完全リスク低下にはなるが、噛み切れず残る可能性あり

🎌 最後に

アニサキス症は突然の激しい腹痛を引き起こし、救急外来に駆け込む人も少なくありません。


しかし、**正しい予防法(加熱・冷凍)**を知っておけば、必要以上に怖がる必要はありません。

ワサビや酢で防げるといった誤解に惑わされず、確実な対策をとることで、お寿司や刺身を安全に楽しむことができます。

大切なのは「怖いから食べない」ではなく、正しい知識でリスクを減らすことです。


もしアニサキスが疑わしい時は無理せず病院に連絡してください!

KOY

当ブログ記事:コロナ/ニンバス株麻疹/由来など!!