


「なんだかダルいな…」それ、もしかして“夏の忍び寄るワナ”かもしれません。
早くも今年も熱くなってしまいました、、、
暑い日が続くと、
「ちょっと疲れただけ」
「年だから仕方ない」
と片付けがちですが、
その“なんとなく体が重い”サイン、実は熱中症の始まりだったりします。
しかも、熱中症は真夏のグラウンドや炎天下だけの話ではありません。
「家の中でじっとしてたのに倒れた」「クーラーつけてるのにフラフラする」――
こんなケース、実際に病院でよく見かけます。
たとえば、以前こんな患者さんがいらっしゃいました。
80代の女性。日中ずっと室内にいたにもかかわらず、突然ぐったりして救急搬送。
ご家族は「暑くないって本人が言うからクーラーも使っていなかった」とのことでした。
診察してみると、脱水と高体温。典型的な室内型の熱中症でした。
私は消化器外科医として日々さまざまな患者さんと向き合っていますが、
熱中症は「誰でも」「突然に」起こりうるということを本当に実感しています。
特に高齢者は、体温調節機能の低下や「喉の渇きに気づかない」こともあり、
重症化しやすいのが現実です。
この記事では、
💡 熱中症の見分け方
💧 正しい水分補給のコツ
🧊 万が一のときの応急処置
…などを、医師の目線から、やさしく・分かりやすく解説します。
2回に分けて紹介していきます!!
今年の夏を元気に乗り切るために、参考にしてください!


① 熱中症ってなに?
④ その思い込み、危険かも?熱中症に関するよくある誤解とその理由
(次回、
・予防法~今日からできる対策~
・もし熱中症かな?と思ったら
・熱中症は“気づけば防げる”病気
などの予定)
当ブログ:虫垂炎など


① 熱中症ってなに?
「熱中症」と聞くと、どんなイメージが浮かびますか?
「炎天下で運動して倒れる」「真夏の部活でバタッと倒れる」…そんな印象が強いかもしれませんね。
でも実は、熱中症は “体の中の温度調節がうまくいかなくなった状態” を指します。
つまり――気温が高い、湿度が高い、風通しが悪い、そして水分が足りない、この4つの条件が揃うと、私たちの体はうまく熱を逃がせなくなってしまうのです。
人間の体は、本来とてもよくできていて、汗をかいたり血管を広げたりして「体温調節」をしています。
ところが、暑さや脱水が続くとこの調節機能が限界を迎えます。
そして体に熱がこもりすぎると、脳・内臓・筋肉などにダメージを与え、最悪の場合、命にかかわる状態になるのです。
さらに厄介なのは、高齢者はこの体温調節機能が年齢とともに低下しているということ。
「喉の渇きを感じにくい」「あまり汗をかかない」など、気づかないうちに体内で熱がこもってしまうことも少なくありません。
最近は「室内熱中症」も増えており、屋外だけでなく家の中でも注意が必要です。
エアコンを“もったいない”と我慢していたり、扇風機だけで済ませていたり…そ
んな状況が重なった結果、病院に運ばれる高齢者の方を私は何度も診てきました。
熱中症は「他人事」ではなく、誰にでも起こりうる身近な健康リスク。



② 熱中症って、体の中で何が起きているの?
夏になると「熱中症に注意しましょう」とよく言われますが、
実際に体の中ではどんなことが起きているのでしょうか?
簡単にいうと、熱中症は“体温調節システムのトラブル”です。
🧠 体はふつう、上手に熱を逃がしている
私たちの体は、暑いときには汗をかいたり、皮膚の血流を増やしたりして、体の熱を外へ逃がしています。
この働きがあるおかげで、体温はおおよそ36〜37度に保たれているんです。
ところが、
- 気温や湿度が高すぎる
- 水分補給が足りていない
- 風がなくて熱がこもる
こうした条件が重なると、体が熱をうまく逃がせなくなり、体温がどんどん上がってしまいます。
🔥 熱がこもると、体が悲鳴をあげる
体温が上がると、最初は「めまい」「だるさ」など軽い症状が出てきます。
それでも対処されないままだと、やがて脳、内臓、筋肉などがオーバーヒート状態になってしまい、
最悪の場合、意識障害やけいれんといった重い症状を引き起こすことがあります。
これはまるで、エンジンに冷却水が足りない車がオーバーヒートを起こすようなもの。
「走れているから大丈夫」と思っているうちに、突然エンジンが止まってしまう。そんなイメージです。
👵 高齢者にとっては、さらにリスクが高い
特に注意が必要なのが高齢者です。
年齢とともに「暑さを感じにくくなる」「汗をかきにくくなる」「喉の渇きに気づきにくくなる」といった生理的変化があるため、
本人も気づかないうちに症状が進んでしまうケースが非常に多いのです。
だからこそ、「暑くないから大丈夫」ではなく、**“冷房をつけておく” “水分をこまめにとる”**などの対策がとても大切になります。



③ 分類でわかる!熱中症の重症度(I度〜III度)
熱中症には、**症状の重さによって3つの段階(I度〜III度)があります。
この分類を知っておくと、「今すぐ水分をとればいいのか」それとも「救急車を呼ぶべきか」**の判断に役立ちます。
それでは順に見ていきましょう。
🌿【I度:軽症】体が「暑さに負けそう!」とサインを出している状態
この段階では、まだ体温の調節機能が働いているため、早めの対処で回復が可能です。
主な症状:
- めまい・立ちくらみ(脳への血流低下)
- 筋肉のけいれん・こむら返り(塩分不足)
- 大量の発汗
🔍対処法:
日陰や涼しい室内に移動し、水分(できれば塩分も含む)を補給してください。
体を冷やすことも大切です。
🌾【II度:中等症】体温調整が追いつかなくなり始めた状態
ここまで来ると、体の中ではすでに熱がこもり始めており、内臓にも負担がかかっています。
主な症状:
- 頭痛・吐き気・倦怠感
- 意識はあるが、反応が鈍い
- 汗が止まってくることも(重症化の兆候)
🔍対処法:
すぐに医療機関を受診しましょう。
水分摂取が難しい、意識がぼんやりしている場合は無理に飲ませないように注意が必要です。
🌾【III度:重症】命に関わる緊急事態
この段階になると、体温は40度近く、もしくはそれ以上になり、
脳や臓器に深刻なダメージが及び始めます。
主な症状:
- 意識がもうろう・受け答えができない
- けいれん・手足の動きがおかしい
- 呼びかけに反応しない
🔍対処法:
すぐに119番通報を。救急車を待つ間は、体を冷やしながら声をかけ続け、意識の変化を見守ってください。
💡重症度の判断は「早めの行動」に役立ちます
熱中症は、見逃すとあっという間に悪化します。
「たかがめまい」と思って放置した結果、II度・III度へ進行することも。
とくに高齢者や持病のある方、小さなお子さんは症状をうまく訴えられないこともあります。
だからこそ、周囲の人が異変に気づき、**“気づいたときに動く”**ことが何より大切です。
次の章では、よくある誤解とその理由について、医師の視点からわかりやすく解説していきます。



④ その思い込み、危険かも?熱中症に関するよくある誤解とその理由
熱中症はニュースでも毎年取り上げられる身近な病気ですが、
実は「間違った認識」が原因で予防や対処が遅れるケースも少なくありません。
ここでは、よくある5つの誤解を取り上げて、正しい理解へ導きます。
❌誤解①:「喉が渇いてないから水はまだいい」
✅ 実際は:渇きを感じた時点で、すでに“軽い脱水”が始まっていることも!
高齢になると、喉の渇きの感覚が鈍くなります。
「水分補給は、喉が渇く前に」が鉄則。目安としては、**1時間ごとにコップ1杯(150〜200ml)**を意識すると◎です。

❌誤解②:「室内なら熱中症にはならない」
✅ 実際は:室内でも、湿度や風通しが悪ければ十分に起こります。
私の経験でも、家の中で倒れて救急搬送される高齢者が後を絶ちません。
特に注意すべきは、「エアコンを我慢する方」。電気代を気にして控える方も多いですが、命には代えられません。
室温28℃以下・湿度60%以下が理想です。

❌誤解③:「汗をかいているから大丈夫」
✅ 実際は:汗が出ていても、すでに脱水が進んでいることも。
たくさん汗をかいている=体温調節がうまくいっている、とは限りません。
汗と一緒に塩分も失われるため、水だけでなく塩分も補給する必要があります(例:経口補水液やスポーツドリンクの活用)。

❌誤解④:「高齢者は暑さに強い」
✅ 実際は:むしろ暑さに“気づきにくく”、重症化しやすいです。
「昔はエアコンなんてなかった」――よく聞く言葉ですが、今の気候は当時よりも格段に過酷です。
また、体温調節機能は年齢とともに低下します。暑さを感じない=安全ではない、という認識が必要です。

❌誤解⑤:「冷たい飲み物は何でもいい」
✅ 実際は:冷たすぎる飲み物やカフェイン飲料は逆効果の場合も。
冷えたジュースやアイスコーヒーはおいしいですが、カフェインには利尿作用があるため、脱水を進めてしまうことも。
また、冷たすぎる飲み物は胃腸の働きを弱めてしまうこともあります。
常温の水、麦茶、経口補水液が理想的です。

続きは次回ブログで紹介します!! KOY
(次回、
・予防法~今日からできる対策~
・もし熱中症かな?と思ったら
・熱中症は“気づけば防げる”病気
などの予定




