
「手術がこわい…」その気持ち、よくわかります。
「手術の日が近づくにつれて、なんだか落ち着かない」「説明は聞いたけれど、やっぱり不安が残る」「本当に大丈夫なのかな…?」
そう感じるのは、あなただけではありません。
医師である私も、もし自分や大切な人が手術を受けることになれば、きっと同じように不安になります。
だからこそ、「こわい」と思うことを否定せず、**“こわいままでも大丈夫”**と伝えたいと思います。
この記事では、手術に向かうための心の整え方や、医師の目線からお伝えしたいことを、お話ししていきます。

第1章:「こわい」…それは、手術を控えた誰もが抱える本音
手術前に感じる“こわさ”は、年齢や性別、病気の種類を問わず、多くの患者さんが抱く自然な感情です。
ここでは、実際に患者さんがネット上やインタビューで語った「こわい」「不安だ」という声を、ありのままにご紹介します。
💬患者さんの“こわい”という声
- 「手術のことを考えるだけで、夜眠れません…」
- 「麻酔って本当に目が覚めるんですか?それが一番怖いです…」
- 「先生の説明はわかったけど、“100%安全”じゃないんですよね…」
— - 「万が一、目が覚めなかったらどうしようって考えてしまいます」
- 「“何かあったらどうするの?”と家族に言われて、さらに不安になった」
- 「もう歳だし、乗り切れる体力があるか心配…」
- 「前に別の手術を受けたとき、すごく痛かった記憶がトラウマです」
- 「先生に聞きたいことはたくさんあるのに、緊張して言葉が出ませんでした」
- 「“頑張ってね”って言われても、怖いものは怖いんです」
📝まとめ:不安は「異常」ではなく「正常」
これらの声に共通するのは、**「理屈じゃなく、気持ちがついてこない」**というリアルな苦しさです。
患者さんの多くは、恐怖心を「弱さ」と捉えてしまいがちですが、実はそれはごく自然で人間的な反応です。
今まで私が経験させて頂いた患者さんは、実際にこのような言葉を口にする人はあまりいませんでした。
みなさん、心の中ではこのような声が出ていたのかもしれません。

第2章:なぜこわいのか?その正体を一緒に見てみよう
「手術がこわい」という気持ちには、はっきりとした理由がある場合もあれば、漠然とした不安として表れることもあります。
でも、その“こわさ”の中身を一緒にひもといていくと、「あ、そうか。だから私は不安だったんだ」と、少しずつ輪郭が見えてきます。
🔍こわさの正体①:痛みへの不安
「術後に痛かったらどうしよう…」
この不安は非常に多くの方が感じます。痛みに弱い自覚がある方や、過去に痛い経験をしたことがある方ほど、恐怖心が強くなる傾向があります。
実際には、近年は痛みを最小限にする術後管理が進んでおり、痛み止めの投与方法・薬剤も豊富です。でも、そうしたことを“知らない”状態では、想像がどんどん膨らみ、不安が増してしまいます。
術前の麻酔科受診や看護師面談があれば、しっかり聞いておきましょう。
🔍こわさの正体②:麻酔への不安
「麻酔から目が覚めなかったら…」
手術の説明では必ず“全身麻酔”の話が出てきます。
その瞬間に「命を預ける」という感覚があり、ふと“死”を連想してしまう方も少なくありません。
実は麻酔の安全性は年々向上しており、麻酔科医という専門家が常に管理しています。でも、麻酔についての知識がなければ、映画やドラマのような最悪のシナリオを想像してしまうのも無理はありません。
術前に検査などで準備をしっかりしているので、麻酔もかなり安全に行えることがほとんどです。
🔍こわさの正体③:手術の結果への不安
「ちゃんと成功するの?」「後遺症はないの?」
これも自然な感情です。
特に初めての手術や、大きな手術のときほど、「予想できない未来」への不安が大きくなります。
医師からの説明でリスクや合併症の話を聞けば聞くほど、冷静になれない方もいらっしゃいます。完璧な保証がないからこそ、“もしも”が心に居座ってしまうのです。
術前は合併症など、嫌な話が多いと思います。
病院の医療安全上、必要なことです。
🔍こわさの正体④:“知らない”ことへの不安
ここにこそ、手術の「こわい」感情の本質があるかもしれません。
- 手術室ってどんなところ?
- 着替えは?持ち物は?家族とはどこで別れるの?
- どのくらい時間がかかるの?術後はどうなるの?
こうした「知らないこと」が多いと、人の心は自然と不安になります。
人は“見通しの立たない状況”に強いストレスを感じるものなのです。
💡“知らない”を“知っている”に変えるだけで、心は落ち着く
不安を完全に消すことはできなくても、
「知ること」で恐怖は確実に和らぎます。
たとえば、
- 手術当日の流れを事前に知る
- 麻酔について説明を受ける
- 術後の痛み止めの種類や計画を確認する
それだけで、「あ、なるほど」「これなら大丈夫かも」と思えるようになります。
🧘♀️まとめ:不安の正体に光を当てると、心は少し軽くなる
あなたの“こわさ”は、何か悪いものではありません。
むしろそれは「備えようとする力」の表れです。
その力を活かすために、ぜひ一緒に「知ること」から始めていきましょう。

第3章:医師として、できるだけのことをしているという事実
あなたが「手術がこわい」と感じているそのとき。
実は私たち医療者も、まさにその瞬間に**“あなたの命を守るための準備”**を重ねています。
🔧 手術の安全性は、日々進化しています
「手術はリスクがあるもの」——
それは確かに事実です。ただし、そのリスクは限りなく小さく抑える努力が、医学の進歩と共に続けられています。
現在では、
- 術前検査や評価によるリスク管理
- 麻酔技術や機器の進歩
- 内視鏡やロボット手術など、低侵襲な選択肢
- ガイドラインに基づいた安全な手術手順の徹底
といった形で、「安全性」は非常に高い水準に保たれています。
不安な気持ちは自然なことですが、どうか「手術は危ないこと」という印象だけで判断せず、現代の医療が持つ“守る力”にも目を向けてみてください。
👥 あなたを支えるのは“1人の医師”ではありません
手術室に入ると、そこにはたくさんの専門職がいます。
私たち医師だけではなく、以下のようなチーム医療体制で、あなたを支えています。
- 麻酔科医:眠りと痛みを安全に管理し、あなたの命を守るプロ
- 手術室看護師:器具や滅菌管理だけでなく、患者さんの表情・呼吸・動きにまで細かく気を配るスペシャリスト
- 臨床工学技士:手術機器の管理とトラブル対応のエキスパート
- 病棟看護師・薬剤師・リハビリスタッフ:術前術後のケア全般を支える存在
どんなに経験豊富な外科医であっても、“ひとり”で手術をすることはありません。
それぞれの専門家が、それぞれの持ち場で、あなたの無事と回復を真剣に願いながら働いています。
💼 命を預かるという責任感と、準備の積み重ね
私たちは、“偶然”にあなたの手術を担当しているわけではありません。
日々、研修・シミュレーション・勉強・振り返りを通して、「万が一」すらも想定して準備をしています。
たとえば、
- 手術前のミーティングで患者さんごとに注意点を確認
- 過去の似た症例の振り返り
- 必要があれば他の専門医との相談も
そして何よりも、**「この手術で、あなたの未来が守られるように」**という気持ちで、手を動かしています。
☘️まとめ:あなたは、守られる側にいていい
手術の前、不安でいっぱいのときに「医療者は淡々として見える」と感じたことがあるかもしれません。
でもその裏側には、必死の準備と、命を守るという強い責任感があります。
あなたは、頑張りすぎなくて大丈夫。
安心して、医療のチームに身を委ねてください。
私たちは、あなたを迎えるための準備をもう整えています。

第4章:実際の声(患者の体験談)
1. ブログより:術前のドキドキが伝わる一言
「夜9時ごろ、消灯前。担当の先生が点滴に来てくれたのですが…気持ちは大暴れ!静かにしないとと思いながら、涙が溢れてきてしまいました。先生はずっと手を握って、優しく微笑んでいてくれました」
アメーバブログ(アメブロ)
→術前の不安がそのまま“気持ちの暴走”につながってしまう様子が痛いほど伝わってきます。ですが、その時にそばにいてくれた医療者の”優しさ”によって、心が解放された瞬間でもあるのですね。
2. 中学生の経験:手術室の入り口で訪れた“本当の不安”
「手術室に向かう途中、足が震えて歩けなくなりそうでした。その時、隣の看護師さんが『昨日はよく寝れたかな、緊張したんじゃない』と声をかけてくれて、背中に優しいぬくもりを感じました。麻酔前にはそっと手を握ってくれたおかげで、少しずつ気持ちが落ち着いていったのを覚えています」
jona.gr.jp
→不安が極限に達した瞬間の“身体の反応”と、それをふっと軽くする看護師さんの寄り添いの力強さが胸に響きます。
3. ブログ:局所麻酔手術前の心配
「“途中でお腹が痛くなったらどうしよう!”“本当に意識があるまま切っても痛くないの!?” と不安でした。でも、『途中でトイレに行ける』と聞いて安心しました。手術中に感じたのは、意外にも不安ではなく“すべてが興味深い”というワクワクの方でした」
がんサバイバー・クラブ
→具体的な心配があると、それがストレスになることがありますが、対処策が見えると視界が変わる——そんな変化がよく伝わります。
4. インタビュー:率直な不安の正直な対話
「私は手術をするのも初めてで非常に恐かったです。“目が覚めなかったら?”などの不安が常にありました。でも、勇気を出して『先生はこの手術を何回経験されていますか?』と尋ねたところ、『100回以上、月に1回は執刀しています』とお聞きしました。それを聞いて『私も安心です』と思えました」
dipex-j.org
→率直な質問が、信頼形成の決定的なきっかけになったことが心に残ります。
5. 病院サイトの声:医師と看護師の支え
「説明がしっかりしていて、先生や看護師さんが優しく声をかけてくれました。“ここが痛いかな? 大丈夫かな?”と気にかけてくれて、とても安心できました」
niimura-hp.or.jp+1
→医療従事者のちょっとした声が安心のスイッチになった、温かな証です。
医師として伝えたいこと:
- “こわい”と感じるのは、とても自然で人間らしい反応です。
- あなたのその不安には、必ず「寄り添ってくれる医療者」がいます。
- 言葉、手のぬくもり、説明、笑顔——どれも小さなアクションに見えて、心を支える大きな力になります。

さいごに・・・
記事を読んでいただいてありがとうございました。
手術前で不安な気持ちを抱いていらっしゃる患者さんも読んでくれましたか?
私たち医師や看護師などの行動や一言が少しでも支えてなってもらえると嬉しいです。
たまに思うのですが、手術を行う医療職より手術という大きな不安を乗り越える患者さんの方がカッコいいと思います。本当に・・・
手術頑張って乗り越えてください!!
KOY


