ハチに刺された!まず何をすべき? アナフィラキシーショックとは?

「うわっ、刺された!」


野外でのレジャー中や、ちょっとした庭仕事の最中――


気づけば、ハチに刺されていた…という経験、意外と多いのではないでしょうか?

ハチに刺されると、強い痛みや腫れに驚くこともありますが、


「でもこのくらいなら様子見で大丈夫かも…」と、そのままにしてしまう人も少なくありません。

ですが――


ハチ刺されは、時に命に関わるアレルギー反応(アナフィラキシー)を引き起こすこともある


決して侮れない“医療的緊急事態”です。

このブログでは、ハチに刺されたときに取るべき正しい応急処置


そして、どんなときに医療機関を受診すべきかを、外科系医師である筆者がわかりやすく解説します。


ぜひ最後まで読んでみてください。

ハチに刺された後に重症化した症例の紹介

ハチに刺されると、体の中で何が起きている?

刺されたときの応急処置

ハチに刺されないための予防策

ハチに刺された後に重症化した症例の紹介

ある夏の日の午後、一本の電話が外来に入りました。


「ハチに刺されたようです。少し腫れているけど、今のところは元気です。」


本人からの連絡で、念のため診察を希望して来院されることに。

その後、中年の男性(50代)が受付に姿を見せました。


しかしその直後、受付で突然ふらつき、意識を失って倒れる事態に。

すぐに救急外来へ搬送し、医療スタッフが迅速に対応。
血圧は低下し、皮膚にはじんましん、唇の腫脹、呼吸の異常――
典型的なアナフィラキシーショックの状態でした。

アドレナリン筋注、酸素投与、輸液、抗ヒスタミン薬・ステロイドの投与などを行い、


幸いにも処置後は速やかに状態が改善し、意識も回復。
その後は経過も安定し、入院観察ののち無事に退院となりました。

ハチに刺されると、体の中で何が起きている?

ハチに刺された直後、体の中では免疫システムが“異物に対して反応”を始めます
ハチの毒には、ヒスタミンや酵素、ペプチドなどの成分が含まれており、それに対する反応の程度は人によって異なります。

大きく分けると、ハチ刺されに対する体の反応は**「局所反応」と「全身反応」**の2つに分類されます。


✅1. 局所反応:刺されたところが「腫れて痛い」

最もよく見られるのがこの局所反応です。

  • 刺された部位が赤く腫れ、痛みやかゆみを伴う
  • 数時間〜数日で改善することが多い
  • 氷などで冷やすと症状が和らぐ

この反応だけで済めば軽症の範囲ですが、問題はその先に起こりうる全身性のアレルギー反応です。


⚠️2. 全身反応:じんましん、呼吸困難、そしてアナフィラキシー

ハチ毒に対する体の免疫反応が強く出ると、刺された場所以外にも影響が及ぶことがあります。
これを全身反応と呼び、なかでも特に注意が必要なのがアナフィラキシーです。


💥アナフィラキシーとは?

アナフィラキシーは、アレルギー反応の中でも最も重篤な状態で、命に関わることもあります。

  • 全身にじんましんが出る
  • 喉の腫れや声がれ、呼吸困難
  • 血圧が低下し、意識を失うことも(アナフィラキシーショック)
  • 発症は刺されてから数分〜30分以内が多い

処置が遅れると、死に至る危険性もあるため、迅速な対応が不可欠です。


❗「初めてだから大丈夫」とは限らない!

アナフィラキシーは、過去に刺されたことがある人だけに起きるとは限りません。
初めての刺傷でも、体質や体調によっては重篤な反応が出る可能性があります。

特に注意が必要なのは:

  • 過去に強いアレルギー反応を起こしたことがある人(食物・薬など)
  • 喘息やアレルギー体質のある人
  • 複数回刺された場合

「前は平気だったから今回も大丈夫」
そう思ってしまうことが、一番の落とし穴です。

【蜂刺され】アナフィラキシー死から身を守る術 アウトドアでは注意「刺されないポイント」3つ | 「病気」と「症状」の対処法 | 東洋経済オンライン

刺されたときの応急処置

ハチに刺されたとき、まず大切なのは「慌てずに冷静に対処すること」です。
そして、正しい応急処置を早く行うことが、その後の症状を大きく左右します。

ここでは、刺された直後にすべき行動を、4つのステップでご紹介します。


✅1. その場で安全を確保!まずは「逃げる」

ハチに刺されたということは、近くに巣がある可能性が高いということ。
特にスズメバチは「警戒フェロモン」によって仲間を呼び寄せる習性があり、2回目、3回目の刺傷が重症化のリスクを一気に高めます。

  • まずはその場から離れることが最優先
  • 走ってOK、振り払う動作は逆効果のことも
  • 服の中に入った場合は、慌てず静かに取り除く

✅2. 針が残っていれば、すぐに取り除く(特にミツバチ)

ハチの種類によっては、刺したあとに毒針が皮膚に残ることがあります(特にミツバチ)。
そのままにしておくと、毒が体内に長く注入されてしまうため、速やかに除去しましょう。

  • 指でつままずに、カード類でそっとこすり落とすのが◎
  • ピンセットを使う場合は、毒袋をつぶさないように慎重に
  • スズメバチやアシナガバチは基本的に針を残さない

✅3. 刺された場所を冷やす(腫れ・痛み対策)

毒の拡散を防ぐためにも、刺された部位をすぐに冷やすことが大切です。

  • 保冷剤や氷をタオルで包んで当てる
  • 直接肌に氷を乗せるのは避ける(凍傷のリスク)
  • 痛みやかゆみが和らぎ、腫れの進行も抑えられる

✅4. 症状が軽くても、しばらくは経過を観察!

刺された直後は元気でも、15〜30分後にアナフィラキシー症状が出ることがあります。
特に、次のような症状が見られたらすぐに医療機関を受診、もしくは救急要請を!

  • 全身にじんましんやかゆみ
  • 唇やまぶたの腫れ
  • 呼吸が苦しい、咳が止まらない
  • 意識がもうろうとする

また、過去にハチ刺されで強い反応を起こした人や、2カ所以上を刺された場合も、症状の有無に関わらず受診をおすすめします。

ハチに刺されないための予防策

ハチに刺されたときの対処法も大切ですが、そもそも刺されないようにする工夫が一番の安全策です。
特に夏〜秋は、ハチの活動が活発になる季節。レジャーや作業中に不用意に接近してしまわないよう、以下のポイントをしっかり押さえておきましょう。


✅1. 巣に近づかない!ハチの縄張りを避ける

スズメバチやアシナガバチは、巣を守るために攻撃的になる習性があります。

  • 木のうろ、軒下、屋根裏、土手などは巣がある可能性のある場所
  • ハチが多数出入りしている場所には絶対に近づかない
  • ガサガサと草むらをかき分ける行動も要注意

もし巣を見つけたら、自分で駆除せずに専門業者や自治体に相談しましょう。


✅2. 黒い服はNG?ハチは「黒」に攻撃的!

ハチ、とくにスズメバチは黒いものに強く反応して攻撃してくる習性があります。

  • 外出や作業時は白やベージュなど明るい服を選ぶ
  • 髪を覆える帽子やタオルも効果的
  • 黒いリュックやバッグにも注意

これはハチが「天敵=熊」の色を連想して攻撃してくるためと言われています。


✅3. 香水・整髪料・甘い飲み物にご注意!

ハチは甘い香りやフルーツの匂いにも敏感です。

  • 香水や整髪料、ボディスプレーは極力控える
  • アウトドアでは缶ジュースやスポーツドリンクの飲みかけにハチが寄ってくることも
  • 飲み物の開けっぱなしは避け、ストローで飲むなどの工夫を

✅4. 園芸・草刈り・登山では「服装と音」に気をつけて!

屋外での作業や登山中に刺されるケースも非常に多くあります。
以下のポイントを押さえて、安全対策を。

  • 長袖・長ズボン・軍手・帽子は必須
  • 足首が出ないよう、ズボンの裾を靴下の中に入れる
  • 草刈り機などの振動・音にハチが興奮することも
  • 作業前には軽く周囲を観察・確認する習慣を

✨「ちょっとした注意」でハチ刺されは防げる!

ハチ刺されは、ほんの少しの工夫や意識の違いで、防げるケースがたくさんあります。
毎年多くの人がハチによる被害に遭っていますが、その多くが「知らずに刺激してしまった」結果です。

「知らなかった」を「知っていた」に変えること。
それがあなたや大切な人の命を守る、何よりの予防になります。

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