健診で「便潜血陽性」だけど症状がない → どうすれば!?

ある日、いつものように届いた健康診断の結果。


「便潜血陽性」という言葉を見て、一瞬ドキッとしたけれど――


特にお腹が痛いわけでもないし、便も普段通り。

「これって…放っておいても大丈夫なのかな?」


そんなふうに思った方も、多いのではないでしょうか。

私は普段、消化器外科医として外来や手術に携わっていますが、
こうした「無症状だけど、検査結果に異常がある」というケースにこそ、
実は大切なサインが隠れていることもあると感じています。

今回のブログでは、
なぜ「便潜血陽性」という結果を“そのままにしない方がいい”のか、
そして追加検査(例えば大腸カメラ)を受ける意味について、
医師の視点からできるだけわかりやすくお話しします。

読み終わったあとに、
「ちょっと検査、受けてみようかな」と思っていただけたらうれしいです。

①便潜血陽性とは?

「便潜血陽性(べんせんけつようせい)」――
健診の結果でこの言葉を初めて見たとき、驚いたり、少し怖くなったりする方も多いと思います。
でも、まずは落ち着いてください。これは「がんです」という診断ではありません。

便潜血検査とは、便の中に目には見えないレベルの血液が混じっていないかを調べる検査です。
ほんの少しの出血でも反応する、非常に敏感な検査で、「大腸がんの早期発見」に役立つ大切なスクリーニング手段のひとつです。


便に血が混じる原因って?

「血が出る」と聞くと、すぐに深刻な病気を思い浮かべるかもしれませんが、実は便に血が混じる原因はさまざまです。

たとえば…

  • 痔(じ):最も多い原因のひとつで、便の出しにくさやいきみによって出血します
  • 大腸ポリープ:一部のポリープは出血しやすく、放置するとがん化することもあります
  • 大腸がん:ごく初期でも少量の出血があることがあります
  • 腸の炎症:潰瘍性大腸炎や感染性腸炎などが原因になることも


偽陽性って何?

便潜血検査は「陽性=何かしらの出血の可能性あり」という結果を出しますが、
“偽陽性(ぎようせい)”=本当は異常がないのに陽性反応が出るケースもあります。

たとえば…

  • 硬い便による軽い出血(痔や肛門の傷)
  • 生理中や直後に検査をした女性のケース
  • 検体の採り方の影響(便を採るときに擦れすぎるなど)

つまり、「陽性だから=がん」というわけでは決してありません。
ただしその一方で、症状が出る前の“早期がん”が見つかることがあるのも、便潜血陽性の特徴です。

だからこそ、大切なのは「陽性だったときにどう動くか」。
無症状でも、追加の検査を受けて“安心”を確認することが、ご自身の未来の健康につながります。

②よくある誤解

便潜血陽性と聞くと、多くの方が「えっ…がん?」と驚かれる一方で、
実際には“何も感じていない”ことから、安心してしまう方も少なくありません
しかし、そのまま放置してしまうと、大切なサインを見逃してしまうこともあるんです。

ここでは、外来でもよく聞く「誤解されがちなポイント」をいくつかご紹介します。


● 誤解①:「1回だけ陽性だったから問題ないでしょ?」

たしかに、便潜血検査は2回法で行われることが多く、1回しか陽性でなければ“軽く考えがち”です。
でも実は、1回だけ陽性だった方の中にも、ポリープやがんが見つかるケースはあります

陽性の回数ではなく、陽性が出たという事実が大切なんです。


● 誤解②:「痛みも便の異常もないから放っておいていいよね?」

これは非常によくある誤解です。
実は大腸がんの初期には、ほとんど症状がないことが多いんです。

「症状が出てからでは遅い」
――これは医療者が本当に強く感じていることのひとつです。


● 誤解③:「まだ若いから大腸がんなんて無縁でしょ?」

確かに、40代以下での大腸がんは少ない傾向がありますが、ゼロではありません
近年では、生活習慣の変化などで、比較的若い方の大腸がんも増えてきているという報告もあります。

また、ポリープの段階で見つけて切除できれば、がんになるのを防げるという点でも、検査の意義は大きいんです。


「たぶん大丈夫」ではなく、「ちゃんと調べて安心する」。
それが、ご自身の将来を守る一歩になります。

③ 陽性=すぐにがん?ではありません

「便潜血陽性」と聞くと、つい「もしかしてがん!?」と考えてしまう方も少なくありません。
ですが、陽性だからといって、すぐにがんだと決まったわけではありません


陽性の背景にある“さまざまな理由”

便潜血検査は、便の中に微量な血液が混じっていないかを調べる検査です。
その出血の原因は、大腸がんだけではなく、

  • 痔(じ)
  • 炎症(腸炎など)
  • 一部のポリープ

など、比較的よくある良性の原因によることも多いのです。

つまり、「陽性=必ずがん」ではないということを、まず知っておいていただきたいと思います。


でも…「陽性=無視していい」でもありません

一方で、私たちが診療の中でよく出会うのは、
「症状がまったくない状態で、大腸カメラをしたらポリープや早期がんが見つかった」というケースです。

便潜血検査は、「がんの早期発見につながる、貴重なサインを見つけるチャンス」でもあるのです。

④ なぜ大腸カメラがすすめられるのか

便潜血検査で「陽性」と言われたとき、
次に勧められるのが 大腸内視鏡検査(いわゆる“大腸カメラ”) です。

「痛そう」「怖い」「面倒くさそう」など、いろいろな不安が浮かぶのも自然なことですが、
この検査には、見えないリスクを“見える化”する大きな意義があります。


便潜血検査は「きっかけ」にすぎない

便潜血検査は、あくまで“血が混じっている可能性”を示すスクリーニング検査。
どこから、なぜ血が出ているのかは、この検査だけではわかりません。

だからこそ、実際に腸の中を直接見て原因を調べる必要があります。
それが大腸カメラです。


大腸カメラでしかわからない“異常”がある

大腸カメラのすごいところは、
早期のポリープやがんを“その場で発見し、その場で切除できる”ことです。

外来では、

「全く症状もなかったけど、検査してみたらポリープが見つかって、その場で取ってもらえました」
という患者さんも多くいらっしゃいます。

“未然に防ぐ”ための検査であることが、大腸カメラの大きな魅力なのです。


一度受けておけば、安心材料にもなる

大腸カメラを一度受けて、何も問題がなければ
「自分の腸は今のところ大丈夫」という大きな安心を手に入れることができます

不安な気持ちを抱えたまま日々を過ごすより、
検査を受けてはっきりさせた方が、心も体もスッキリするはずです。


症状がないからこそ、今がチャンス。
「何もなければそれで良し。何かあっても、早く見つけられたら良し」――
それが、大腸カメラを受けるべき理由です。

⑤ 受けるタイミングと流れ

便潜血検査で陽性となったら、できるだけ早めに医療機関を受診するのが大切です。
かかりつけ医や内科・消化器科のクリニックで相談すると、必要に応じて**大腸カメラ(内視鏡検査)**の予約や紹介をしてもらえます。

大腸カメラの検査自体は、以下のような流れで行われます:

  1. 事前の診察・説明、検査日の予約(検査内容・注意事項の確認)
  2. 検査前日~当日に下剤で腸をきれいに
  3. 検査本番(15〜30分程度)
  4. 必要があれば、その場でポリープ切除も可能
    (医療機関によるため、後日切除になることも多いです!必ず医療機関の方針に従ってください。)

検査当日は少し大変に感じるかもしれませんが、
一度受けておけば「安心」につながる、とても大切なステップです。

⑥ まとめ|“無症状”でも一歩踏み出すことが大切

今回もブログを読んでいただいてありがとうございました。

便潜血陽性に対して大腸カメラを行った場合、

  • 大腸ポリープ:約30~50%の確率で発見されます。
  • 大腸がん:約2~5%の確率で発見されます。

これらの統計は、便潜血検査がスクリーニング検査であり、精密検査としての大腸内視鏡検査が重要であることを示しています。

参考:四日市あおば内科・消化器内科クリニック |+1おおの内科・内視鏡クリニック |+1

医師をしていると、みんな多くの人を大腸癌で亡くした経験をしています。

さらに言うと、近い人を大腸癌で亡くした経験もあります。

大腸がんは早めに見つかると治る可能性が十分にある病気です。

確かに、便潜血陽性でもだいたいは癌ではないし、

また、大腸カメラを受ける怖さもあると思いますが、多くの方々に検査を受けてもらえると嬉しいです! 

KOY