


こんにちは。
突然ですが、みなさんはきちんと健診を受けていますか?
毎年の健康診断。
特に体調に問題もないし、まぁ大丈夫だろう――
そんな軽い気持ちで受けた健診の結果用紙に、ふと目をやると…
「肝機能異常」
「要精査」
「D判定」
一瞬で血の気が引いた。そんな経験、ありませんか?
病院やクリニックで外来診察をしていると、
健診で肝機能異常を指摘され、精査目的にいらっしゃっていただく方を多く拝見します。
医療機関を受診することは、とてもすばらしい事です!!
実際に、精査しても何もないことが多いですが、
一部の方には肝細胞癌などのように命に関わる、そして治療が必要な状態であることがあります。
そのような場合はなるべく早く治療をした方が治る確率は上がります。
そもそも健診の目的の1つは病気の早期発見もあると思いますが、、、、
しかし意外にも、健診結果で肝機能異常を指摘され精査をするように書かれていても
医療機関を受診せず、数年後に進行した状態で病気が発覚する方もいらっしゃいます。
今回は一人でも多くの方に健診後にしっかりクリニックに受診してもらうために
・肝機能異常についてや
・行う可能性のある検査について
・また、怖い病気について
述べていきたいと思います。
ご自身やご家族の健康を守るために、
「知ること」から、一緒に始めていきましょう。
- 【よくある原因】肝機能異常=即病気とは限らない
- 【放置リスク】「放置すると“沈黙の臓器”が本当に沈黙する」
肝炎や肝硬変の話 - 【対応策】再検査・生活改善で防げる!今できる3つのこと
- 【まとめ】“知っておく”だけで未来は変わる
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【よくある原因】肝機能異常=即病気とは限らない
「肝機能に異常があります」
そう聞くと、「もしかして肝臓の病気?」「肝臓が悪いってこと?」と不安になる方がほとんどです。
でもまず知っておいてほしいのは、肝機能の数値が高い=すぐに深刻な病気とは限らないということです。
🔍 よく見る3つの数値の意味
健診で「肝機能異常」と言われたときに、特に注目されるのがこの3つの値です。
- AST(GOT)
→ 肝臓だけでなく、筋肉や心臓などにも含まれる酵素。肝細胞が壊れると血中に漏れ出て上昇します。 - ALT(GPT)
→ ASTよりも肝臓に特異的な酵素。ALTが高いと、肝臓由来の異常が強く疑われます。 - γ-GTP(ガンマ-GTP)
→ アルコールや脂肪肝、薬剤の影響を受けやすく、お酒をよく飲む人では特に上昇しやすい酵素です。
🤔 数値が高くなる“よくある原因”
🥃 1. お酒(アルコール)
毎日飲む人や「週末だけまとめて飲むタイプ」の方でも、γ-GTPが上がりやすくなります。
ALTやASTも連動して上昇することがありますが、飲酒を控えるだけで数値が改善するケースも多いです。

🍔 2. 脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患=NAFLD)
肥満気味の方や、運動不足・糖質中心の食生活の方では、肝臓に脂肪がたまり、炎症を起こすことがあります。
脂肪肝でもALTやASTが高くなることがあります。

💊 3. 薬剤やサプリメント
実は、風邪薬や解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンなど)、サプリメント、健康食品でも肝機能に影響することがあります。
特に長期間の服用や、複数併用している場合は要注意です。
💪 4. 筋トレ・激しい運動
意外に知られていませんが、激しい筋トレやマラソンの翌日などにもASTやALTは上がることがあります。
これは筋肉の損傷による一時的な上昇で、病気ではありません。


📝 まとめ
肝機能の数値は、肝臓だけでなく生活習慣や一時的な身体の状態にも左右されるもの。
異常=即病気ではなく、「どうして高くなったのか?」を正しく見極めることが大切です。
次の章では、「放っておいたらどうなるのか?」「精査が必要な数値とは?」について詳しく見ていきましょう。


【放置リスク】「放置すると“沈黙の臓器”が本当に沈黙する」
肝炎や肝硬変の話
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれることがあります。
それは、かなりダメージを受けても症状が出にくいからです。
胃や腸のように痛みを訴えることもなく、
肺のように息切れで気づかせることもなく、
肝臓は黙ったまま、じわじわと傷ついていきます。
🔥 油断して放置すると起こりうる“本当の異常”
▶ 肝炎(かんえん)
肝細胞に炎症が起きる状態です。
原因はアルコールやウイルス(B型・C型)、脂肪肝(非アルコール性脂肪肝炎=NASH)などさまざま。
この段階ではまだ自覚症状がない人がほとんどです。
▶ 肝線維化・肝硬変(かんこうへん)
慢性的な炎症が続くと、肝臓の中で線維が増え、硬くなっていきます。
これが肝線維化で、さらに進行すると肝硬変へ。
肝硬変になると、
- 黄疸(皮膚が黄色くなる)
- 腹水(お腹に水がたまる)
- 意識障害(肝性脳症)
などの重い症状が出るようになります。
❗ がんのリスクも
肝硬変になると、肝がんの発生リスクが飛躍的に上昇します。
特にB型・C型肝炎ウイルスが背景にある場合は、無症状のままがんが進行することも。
🤐 “症状がない”のが一番の落とし穴
「体調は別に悪くないし…」
「お酒やめればそのうち戻るだろう」
そう思って、精密検査や生活改善を先送りにする人はとても多いです。
でも、肝臓は沈黙のまま壊れていく臓器です。
症状が出たときには、もうかなり進行しているケースも少なくありません。
🌱 今なら間に合う
健診で異常を指摘されたということは、まだ軽度な段階で“気づけた”ということ。
今のうちに、原因を見つけて、生活を見直して、必要があれば治療につなげる――
それだけで、未来は大きく変わります。

【対応策】再検査・生活改善で防げる!今できる3つのこと
肝機能の数値が高いと指摘されても、まだ焦る必要はありません。
なぜなら――「今なら間に合う」からです。
ここでは、健診で肝機能異常を指摘されたときに
**あなたが“今すぐできる3つの行動”**を、医師の視点でお伝えします。
① 内科受診・再検査で「本当に異常なのか」を確認しよう
まず大切なのは、もう一度、血液検査を受けること。
健診のデータはあくまでスクリーニング(ふるい分け)なので、
・検査のタイミング
・前日の食事や運動
・一時的なストレスや体調の変化
などで、“たまたま”数値が高く出ることもあります。
そのため、異常値が出たら放置せず、かかりつけ医や内科を受診して、再検査を行うことが第一歩です。
特に次のような場合は、できるだけ早めに相談を:
- 数値が基準値の2倍以上ある
- AST・ALT・γ-GTPすべてが高値
- 家族歴に肝疾患(肝がん・肝硬変など)がある
そして、もし私が病院で患者様を診察するなら
・生活習慣や既往歴などの問診
・血液検査(肝臓などの値、B型肝炎などの感染症、自己免疫疾患などがないかチェック)
・お腹のエコー検査で癌や脂肪肝がないかチェック
・血液検査やエコーで気になる所見があれば、CT検査など追加
・治療が必要ない結果でも、数か月後にもう一度フォローのチェック
このような形で患者様と接することが多いです。
治療すべき病気がないか、気づけていない病気がないか、一度しっかり診ることも大事ですし、また経時的に見ていくことも大事だと思います。


② 飲酒・食事・運動など、生活習慣を少しずつ見直す
肝機能異常の多くは、生活習慣と密接に関係しています。
以下のような習慣がある方は、今日から意識を変えてみましょう。
- お酒を飲む習慣がある方:
→ まずは「休肝日」を週2日以上つくることから。 - 食生活が偏りがちな方:
→ 脂肪肝を防ぐために、野菜・たんぱく質中心の食事を意識しましょう。 - 運動不足が気になる方:
→ 1日15〜30分のウォーキングでも、肝臓の負担は軽くなります。
生活改善はすぐに結果が出るものではありませんが、
**「毎日の小さな積み重ねが、数値改善という形で返ってくる」**と覚えておいてください。
③ 健診データを“去年・一昨年”と比べてみる
意外と忘れられがちなのが、「過去の健診データとの比較」です。
- 去年は正常だったのに、今年急に高くなった?
- 2年前から少しずつ上がってきている?
このような「トレンド」を見ることで、
・急激な変化があるか
・ゆっくり進行しているのか
がわかり、医師の診断や治療方針の参考にもなります。
もし可能なら、過去3〜5年分の健診データを一度見返してみましょう。
ノートやスマホにメモしておくだけでも、将来きっと役に立ちます。
【まとめ】“知っておく”だけで未来は変わる
「肝機能異常」と聞いて不安になったあなたへ。
ここまで読んでくださったこと自体が、とても価値のある一歩です。
肝臓は、自分からはほとんど声を上げてくれない“沈黙の臓器”。
でも健診での数値の変化は、
「ちょっと無理してるよ」
「生活を見直してほしいな」
という、肝臓からの小さなメッセージかもしれません。
放置すれば、肝炎や肝硬変、さらには肝がんといった重い病気につながる可能性も。
30歳台と若い方でも、アルコールの取りすぎで肝硬変になり亡くなった方を経験したことがあります。
お酒が強いから大丈夫ということはなく
お酒が強いと飲めてしますから、かなり危険です。
でも逆に言えば、今、気づけたあなたはとてもラッキーなんです。
再検査を受けて、原因を確かめて、
少しだけ生活を整えてあげるだけで、肝臓はまた元気に働いてくれます。
「知ること」「気づくこと」「動くこと」。
それだけで、未来の自分の健康を大きく守ることができます。
どうかこの機会を、
“怖いお知らせ”ではなく、“未来を変えるチャンス”として受け取ってください。
あなたと、あなたの肝臓の明日が、今日よりもっと健やかでありますように。
KOY




