医師として心に刻んだ、忘れられない上司のひと言たち ~医師10年経って~

こんにちは。 今日は少し趣向をかえた内容にしてみました。

働きはじめて数年が経つ頃、ふと自分の“軸”がどこにあるのか、わからなくなる瞬間があります。

忙しさに流され、決断に迷い、人間関係に悩む――それは医師でも、サラリーマンでも、どんな職業の人でもきっと同じ。

そんなとき、ふと心に浮かぶのは、上司や先輩からの何気ないひと言だったりします。

医師として10年近く働く中で、私の中に深く残っている「言葉たち」があります。


それらは時に厳しく、時にユーモラスで、そして何より“本質”を突いていました。

今回は、そんな言葉の中から、**私がいまも大切にしている、いまも力をもらえる「忘れられないひと言たち」**をご紹介します。

若手医師の方はもちろん、社会で日々がんばるすべての人にとって、


「あ、自分にもこんな言葉あったな」と思えるきっかけになれば幸いです。

はじめに:医師人生10年をふり返って

名言①:「外科医の技術も医者の人間性も10年で決まる」

名言②「いいぞ~、いいぞ~」

最後に

① はじめに:医師人生10年をふり返って

気づけば、医師になって10年近くの歳月が流れていました。


毎日が濃密で、いつも走り続けていたように感じます。


若い頃は、自分をもっと成長させたい、技術を磨きたい、知識を深めたい――そんな一心で、臨床に、勉強に、とにかくがむしゃらでした。

けれど最近の自分はどうだろう、とふと考えることがあります。


忙しさの質が変わり、日々こなすのは手術でも診療でもなく、淡々とした事務的な作業が中心になってきたように思います。


かつてのような向上心や、心を燃やすようなやりがいを感じる機会は、正直少なくなっていました。

そんなとき、ふと脳裏によみがえるのは、かつて出会った上司たちの言葉。


何気なくかけられた一言が、まるで封印されていたスイッチを押すように、心に灯をともしてくれるのです。

この記事は、そんな「忘れられない言葉」たちを、改めて自分自身の中で振り返りながら、書き綴ってみようと思った記録です。


読んでくださる方にとっても、何か小さな気づきや励ましになれば嬉しいです。

この言葉を初めて聞いたのは、まだ医師として右も左もわからなかった頃。


ある上司がふとしたタイミングで口にしたひと言でした。

「外科医の技術も、医者としての人間性も、10年で決まる」

当時の私は、その意味を深く理解していたわけではありません。


ただ、“10年”という数字が、どこか自分の中で目標のように感じられたのです。

「10年頑張れば、自分も一人前の医師になれるのかもしれない」

そんな気持ちで、この言葉をずっと頭の片隅に置きながら、日々の診療や手術、勉強に取り組んでいました。

そして10年が経った今、あの言葉の意味をようやく実感として理解できるようになってきました。

手術が上手いと感じる外科医の多くは、例外なく「努力を続けてきた人」たちです。

結局、10年頑張れる人=努力を続けられる人。その姿勢が技術にも人間性にもにじみ出ているのだと思います。

言い換えれば、「最初が大事」ということなんですよね。

最初に本気で打ち込めなかった人が、その後もダラダラと流されてしまう一方で、最初に全力で頑張れた人は、10年経っても自然と頑張り続けられている。

今振り返ると…

「10年で決まる」と言われたあのとき、まんまと騙された気もします(笑)

でも、「最初が大事」じゃなくて、「10年で決まる」と言われたからこそ、なんだかカッコよく聞こえて、頑張れた気がするんです。


そして気づけば、その“10年”を、私はちゃんと駆け抜けてこれたのかもしれません。

名言②「いいぞ~、いいぞ~」

「いいぞ~、いいぞ~」

これだけ見ると、少し拍子抜けするような、ゆるい言葉かもしれません。


でも、私の中では今も忘れられない“魔法のような言葉”として残っています。

これは、ある上司がよく口にしていた言葉です。


私の執刀の手術が順調なとき、


入院患者さんの経過が順調なとき、


あるいは、病棟全体が落ち着いている日などにも、看護師さんたちに向けて。

「いいぞ、いいぞ」

その言葉には、大げさな褒め言葉ではない分、肩ひじ張らずにスッと背中を押してくれるような不思議な力がありました。

無理にテンションを上げるでもなく、押しつけがましくない。

それでいて、心の奥にはしっかり届く。

そんな「言葉以上の励まし」だったのだと思います。

今でも手術中や病棟で、うまくいった瞬間にふと頭の中でこのフレーズが流れてくることがあります(笑)


“脳内応援団”といった存在でしょうか。

最後に・・・

10年という月日。


それは短いようでいて、確かに多くのものを積み重ねてきた重みのある時間でした。

私にとって医師としての10年は、決して順風満帆ではありませんでした。


失敗も迷いも、自信を失いかけたことも何度もあります。


でもそんなとき、なぜか心にふっとよみがえる“上司のひと言”があったのです。

「外科医の技術も医者の人間性も10年で決まる」


この言葉は、当時の私にとっては“ただの数字”でしかなかったかもしれません。


けれど、その言葉があったからこそ、「10年だけはやってみよう」と思えた。
努力し続ける理由になった。


そして10年が経った今、振り返ってみると、あの言葉は自分を動かした“起爆剤”だったと実感します。

また上司のもう一つの口癖だった

「いいぞ~、いいぞ~」

は、不思議と胸に残っています。


決して大げさに褒めるでもなく、無理に盛り上げるでもない。


それでも、その一言で背中を押された経験は何度もあります。


今も手術中や病棟でふと思い出すと、どこか気持ちが前を向くのです。

――こうした言葉の力は、医師に限ったことではないと思います。


社会人として、組織で働く誰もが、心に刻まれている「誰かのひと言」を持っているのではないでしょうか。

それは、仕事がうまくいかないときに思い出す言葉かもしれないし、


朝、満員電車の中でふと浮かぶ、かつての上司や先輩の励ましの声かもしれない。

孔子の言葉に「三十にして立つ(さんじゅうにしてたつ)」というものがあります。


人としての軸ができるのは30歳ごろ。


まさに、最初の10年をどう過ごすかが、その後の自分をつくっていく。


時代や職種が違っても、この本質は変わらないのかもしれません。

また、陽明学の「知行合一」は、学びと行動が一体となって初めて“本物”になるという考え方。


技術も、人間性も、結局は日々の実践を通して磨かれていくのです。

そして、人を育てるうえで忘れてはいけないのが「言葉」の力です。


仏教の教えにもあるように、「誉めて育てる」「言葉は薬にも刃にもなる」。


ほんの短いフレーズが、人を変えるきっかけになることがあります。

10年という一区切りを迎えた今、自分が言葉を“受け取る側”から、“届ける側”になっていることにも気づきました。


これからは、あのときの上司たちのように、若い医師や周囲の人たちに、少しでも前を向ける言葉を届けられたらと思っています。

もし今、何かに迷っていたり、やりがいを見失っている方がいたら、


自分の中に残っている“あの言葉”を、もう一度思い出してみてください。


きっとそこに、もう一度歩き出す力が眠っているはずです。

KOY

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他サイト:心を輝かせる名言集エピロギ