

「自分はまだ若いから、癌なんて関係ない――」
そう思っていませんか?
たしかに癌の多くは高齢者に多い病気ですが、大腸癌は例外です。
30代という若さでも発症することがあり、実際に私たち外科医が診る患者さんの中にも、働き盛りの世代が含まれています。
一方で、90歳を超えてから突然見つかるケースも少なくありません。
正直やっかいです。
大腸癌は、誰にでも起こりうる病気であり、発見が遅れると命に関わる可能性もある“静かな脅威”です。
しかし、希望があります。
定期的な検診によって、早期に見つけて“治す”ことができる癌でもあるのです。
大腸癌での死亡数が少しでも減って欲しい、そのような希望をもってお届けします。
本記事では、「大腸癌の怖さ」と「検診の重要性」、そして「治療で治る可能性」に焦点を当てて、
大腸癌について今知っておきたいポイントをお伝えします。

第1章:大腸癌の発症率 ― 年齢別・性別で見るリスク
■ 大腸癌はどれくらい多いのか?

日本では、大腸癌は非常に身近な癌の一つです。
国立がん研究センターのデータ(最新:2023年発表)によると、
がんの中で罹患数は「第2位」、死亡数では女性で1位、男性で3位に位置しています。

つまり、「誰かがなるかもしれない病気」ではなく、
**「自分もなるかもしれない病気」**として捉えるべきなのです。
■ 年齢別の発症率:若くても油断は禁物!

一般的には、加齢とともに大腸癌のリスクは上昇します。
特に50歳以降から急激に増加し、60〜70代でピークを迎えます。
年齢層 | 発症傾向 |
---|---|
20〜30代 | 非常に稀(ただし遺伝性疾患や生活習慣により発症する例も) |
30〜40代 | 徐々にリスク増加。油断は禁物 |
50代以上 | 発症率が顕著に上昇。検診開始の推奨年齢帯 |
80代〜 | 発症率は高止まり。治療選択肢が限られることも |
注目すべきは30代でも症例があること。
若年性大腸癌は進行しやすく、見逃されることも多いため注意が必要です。
■ 性別の違い:女性は「直腸より結腸」、男性は「直腸」に多い傾向
男女ともに発症リスクは高いのですが、好発部位に違いがあります。
性別 | 好発部位 | 傾向 |
---|---|---|
男性 | 直腸(S状結腸〜直腸) | 飲酒・喫煙などの生活習慣が影響 |
女性 | 結腸(特に盲腸〜上行結腸) | ホルモンや便秘との関連も指摘 |
また、女性の方が便潜血検査で見つかりにくいという報告もあり、
内視鏡検査の重要性がさらに高まります。
■ まとめ
- 大腸癌は高齢者に多いが、若年層にも発症する可能性がある
- 男女で発症部位に違いがあり、検診の方法も工夫が必要
- 年齢や性別に関係なく、全ての人が「対象者」になる癌
次章では、このような大腸癌を早期に見つけ、治る可能性を高めるために
なぜ「検診」が重要なのかを掘り下げていきます。

第2章: 大腸癌検診で行われる主な検査
① 便潜血検査(免疫法)

- 方法:提出した便から血液の有無を調べる
- 頻度:年に1回の実施が推奨(特に40歳以上)
- 特徴:
✓ 手軽で安価
✓ 見逃しもあるため、陽性なら精密検査(内視鏡)を受ける必要あり
✓ 「陰性=安心」ではない点に注意
✅ こんな人におすすめ:
検診初心者・時間が取れない方でも受けやすい入門的な検査
② 大腸内視鏡検査(大腸カメラ)

- 方法:内視鏡を用いて大腸全体を直接観察。ポリープや癌があればその場で切除も可
- 頻度:
✓ 50歳以上では1~3年に1回の実施が推奨
✓ 家族歴がある場合は40代から検討 - 特徴:
✓ 最も精度が高く、唯一ポリープを同時に除去できる
✓ 下剤の内服や前処置が必要なため、ややハードルは高め
✅ こんな人におすすめ:
便潜血で陽性だった方、家族に大腸癌の既往がある方、安心したい方
③ CTコロノグラフィー(仮想大腸内視鏡)※一部施設で実施

- 方法:CT撮影を用いて大腸の3D画像を作成し、異常をチェック
- 特徴:
✓ 内視鏡に比べて苦痛が少ない
✓ ただし、ポリープの切除はできないので、異常があれば結局内視鏡へ

■ チェックすべき“サイン”はこれ!
検診以外でも、検診していなくても以下の症状がある場合は自己判断せず、受診を検討しましょう。
サイン | 解説 |
---|---|
血便 | 鮮血だけでなく、便に混ざる黒っぽい血も要注意 |
便が細くなった | 「鉛筆のような便」は直腸部の狭窄を疑う |
便秘と下痢を繰り返す | 大腸内に異常がある可能性 |
貧血 | 大腸癌による出血が長期間続くと起こることも |
体重減少 | 食欲があるのに体重が落ちていくときは注意 |
■ 検診を“自分ごと”にするために
- 家族歴がある人は特に積極的な検査を
- 女性は便潜血検査で見つかりにくい傾向があるため、内視鏡も視野に
- 「痔があるから血便はそのせい」と思い込むのは危険!
■ まとめ
検診は、今の自分にとっては「面倒」に思えるかもしれません。
でも、それが将来の「安心」や「命」を守る一歩になります。
「まだ若いから」と思わずに、30代からの検診習慣が、
“治る大腸癌”をつくる第一歩です。

第3章:癌の深達度で変わる生存率 ― 早期発見が命を救う理由


■ 「深達度」が浅いと良い!!
大腸癌が「どこまで進んでいるか」を判断するうえで重要なのが、**癌の“深達度”=進行度合い(ステージ)**です。
癌は、粘膜にとどまっているものから、腸の壁を突き破って外に広がるもの、さらにはリンパ節や他臓器へ転移しているものまで、段階的に分類されます。
この進行度(ステージ)は、治療の選択肢や「治る可能性=生存率」に大きく影響を与えます。

■ ステージ別の5年生存率(日本の代表的なデータより)
ステージ(深達度) | 癌の進行度合い | 5年生存率(目安) |
---|---|---|
ステージ0(上皮内癌) | 粘膜内にとどまっている | 約99%以上 |
ステージⅠ | 筋層まで浸潤しているが、転移なし | 約95%前後 |
ステージⅡ | 漿膜近くまで浸潤するが、転移なし | 約85〜90% |
ステージⅢ | リンパ節への転移あり | 約65〜75% |
ステージⅣ | 肝臓・肺など遠隔転移あり | 約10〜20%程度 |
※施設や症例により多少の差はあります
■ 数字が示す“早期発見のチカラ”
この表からも分かる通り、ステージが進むほど、生存率は大きく下がります。
特にステージⅣでは、治癒が困難で、延命やQOL(生活の質)を重視した治療が中心になることもあります。
一方で、ステージ0〜Ⅰであれば、内視鏡や手術で根治できる可能性が非常に高いのです。
■ 「気づいた時にはステージⅢやⅣだった」という現実
大腸癌は進行が比較的ゆっくりな癌ではありますが、初期症状が乏しいため発見が遅れがちです。
実際、「少しの血便を痔だと思って放置していた」「お腹の違和感を年齢のせいにした」などの理由で、診断時にはステージⅢ・Ⅳというケースも少なくありません。
だからこそ、前章でお伝えした検診の習慣化が重要になるのです。

第4章:進行すると治療が大変 ― 転移とQOLへの影響

■ 転移を伴うと「手術」だけでは済まない
大腸癌がステージⅢやⅣに進行している場合、
癌はすでに腸の外へ広がっている可能性があります。
特に多いのが、肝臓や肺への転移です。
- 肝転移は全身の血液が集まる肝臓の特性上、起こりやすい
- 肺転移は静脈を通じて広がることが多い
こうした転移があると、単純な腸の手術だけでは根治が難しくなり、
治療の中心は化学療法(抗がん剤)や分子標的薬、放射線治療などに移行します。
■ 化学療法の現実 ― 効果と副作用のバランス
化学療法には、以下のような特徴があります:
特徴 | 解説 |
---|---|
全身治療 | 体中に散らばった癌細胞を対象にするため、転移に有効 |
継続性 | 多くの場合、数ヶ月から年単位で継続する必要がある |
副作用 | 吐き気・脱毛・倦怠感・下痢・神経障害などが出ることも |
治療の目的は、「完治」ではなく「延命」と「症状の緩和」に変わるケースもあり、
その分だけ身体的・精神的な負担も大きくなります。
■ QOL(生活の質)への影響も無視できない
進行癌になると、以下のように生活への支障も生じやすくなります:
- 人工肛門(ストーマ)の造設が必要になることも
- 化学療法に伴い、日常生活の制限や通院負担が増える
- 食事制限・入院・就労の制限による社会的・経済的ストレス
特に、働き盛りの世代や高齢の方では、
**「治療と生活のバランス」**が非常に重要な課題となります。
■ だからこそ、「早く見つける」ことが最も効果的な治療
進行した大腸癌の治療は、“難しい”ではなく“つらい”に変わっていくこともあります。
手術の選択肢がなくなり、生活の質も大きく損なわれてしまう前に、
検診による早期発見が、最善の“治療”なのです。

さいごに
大腸癌は、誰にでも起こりうる身近な病気です。
若いから大丈夫、高齢だからもういいや…そんなふうに思わずに、
**年齢に関係なく「気づくこと」「調べること」そして「行動すること」**が大切です。
今回の記事で強くお伝えしたいのは、
大腸癌は早期に見つければ、治る可能性が高い癌です。
逆に、発見が遅れると、治療が難しくなり、生活への影響も大きくなります。
体力的にもメンタル的にも大変です。
でも、恐れる必要はありません。
私たちには「検診」という強い味方があります。
自分のために、家族のために――
「今」こそが、一歩踏み出すベストなタイミングです。
あなたの今日の行動が、家族の未来につながります。
健康的な生活を意識し、検診をしっかり行いましょう!!
予防については、今回お伝えしたい内容ではないので別途記事に致します。
治療についても、今回お伝えしたい内容ではないので別途記事に致します。
希望があればXにてコメントお願いします。
KOY
当ブログ記事:医師/婚活事情、スーパーフード/アーモンド、GLP-1ダイエット




