




「最近、物忘れが増えた気がする…」
「スマホで調べたことを、すぐ忘れてまた検索してしまう…」
こんな経験、ありませんか?
実はいま、スマートフォンの長時間使用が原因で、**一時的な“認知機能の低下”**を訴える人が急増しています。
その現象は「スマホ認知症」と呼ばれ、若い世代から中高年まで、誰にでも起こりうる“令和の新型生活病”として注目されています。
そして2025年、ついに東京都内で「スマホ認知症外来」が誕生。
これは一体どういう病気なのか? 本当に治るのか?
そして、私たちの生活とどう向き合えばよいのか——。
今日はこの話題を、医師の視点から少し深掘りしてみたいと思います。
① ニュースの概要
③ 家庭や職場でできる具体策 ― スマホ認知症から脳を守る習慣
⑤ まとめ



① ニュースの概要

2025年6月12日、東京都葛飾区の金町駅前脳神経内科にて、日本で初めての 「スマホ認知症外来」 が開設されました。
これは、スマートフォンの長時間使用によって一時的な認知機能の低下を訴えるケースが急増していることを受けての取り組みです。
予約について→mhlw.go.jplight-clinic.com+10kyodonewsprwire.jp+10chibanippo.co.jp+10
この「スマホ認知症外来」では、一般的な加齢による認知症とは異なり、
デジタル機器特有の**“情報過多による脳疲労”**が原因とされる一時的な認知機能低下に焦点を当てています。
若年層から中高年に至るまで、誰にでも起こりうる現象であり、
その予備軍は1,000万人〜2,000万人にも上る可能性があると指摘されています 。

🏥 診療環境の特色
- オンライン診療を中心に実施
地理的制約をなくすため、スマホで予約~問診入力~診察をオンラインで完結可能。ライフスタイルや症状に応じた問診票に加え、必要があれば認知機能スケールを導入し評価を行います 。
- 対面併用も可能
対面診察も含め、投薬や生活アドバイス、スマホの適切な使い方の指導を医師がきめ細やかに対応。これは単なる症状ケアにとどまらず、脳の健康意識を高める機会として重視されています 。
- 予約方法・スケジュール
6月12日(木)より受付開始。アプリを通して日時を選び、診察前に問診票を提出する流れになっています




② 「スマホ認知症」の定義と診断 ― 医師の目線からの考察
「スマホ認知症」という言葉は、現在のところ正式な医学用語ではありません。
しかし、診療現場では確かに“記憶力の低下”や“集中力の散漫”といった訴えが、以前よりも若年層を含めて多く聞かれるようになっています。
この現象は、「情報過多による脳のオーバーヒート」とも言える状態であり、スマートフォンなどのデジタル端末の過剰使用が引き金となっています。
🔍 スマホ認知症の仮説的定義
スマホ認知症とは、以下のように定義できます(※筆者による仮説的整理):
スマートフォン等の長時間使用により、脳の一部、特にワーキングメモリや注意制御を担う前頭前野が慢性的に負荷を受け、一時的な認知機能障害(記憶力・集中力・判断力の低下)を呈する状態。加齢性認知症とは異なり、可逆的であることが多い。
🧠 脳科学的な背景
- スマホは断続的な刺激と多量の情報を短時間に浴びせるため、脳は常にマルチタスク状態に置かれます。
- これにより、記憶の定着を担う海馬、注意や実行機能を担う前頭前野が疲労し、情報を「処理したつもり」になることが増えていきます。
- 特に睡眠前のスマホ閲覧によって、ブルーライトがメラトニンの分泌を抑制し、睡眠の質が低下 → 認知機能の低下という悪循環に。
🩺 診断のアプローチ
現時点で「スマホ認知症」に対する確立された診断基準は存在しませんが、臨床的には以下のようなチェックリストや問診をもとに、仮診断されることが多いです。
チェックリスト(例:3つ以上当てはまる場合、注意)
- 最近、人の名前や予定が思い出せないことが増えた
- スマホで調べた内容を、何度も検索し直してしまう
- 電車や信号待ちなど、すきま時間にスマホを手放せない
- 単純な計算・漢字がすぐに思い出せない
- 複数の作業をしていると段取りが混乱する
- 「最近疲れが取れにくい」と感じている
補助的な評価方法
- HDS-RやMMSEなどのスクリーニング検査では見落とされることも多く、主観的訴えや生活背景を丁寧に把握する必要あり。
- 認知機能に関しては、ワーキングメモリ評価(n-back taskなど)が適している可能性も。
- 問診では、「使用時間・就寝前使用・SNS閲覧習慣・通知頻度・生活リズム」などのデジタル行動を具体的に聞くことがカギ。
🧭 加齢性認知症との違い
特徴 | スマホ認知症 | 加齢性認知症(例:アルツハイマー) |
---|---|---|
年齢層 | 若年〜中高年 | 高齢者中心 |
進行性 | 非進行性(多くは可逆的) | 進行性 |
原因 | デジタル過負荷、睡眠障害 | 神経変性、アミロイドβ蓄積 など |
回復可能性 | 高い(生活習慣の見直し) | 原則不可逆(進行抑制は可能) |
検査での変化 | 見られにくい | MRIやPETで異常所見が得られることあり |

(FNNプライムオンライン:脳が過労状態となる「スマホ認知症」とは 1日2時間以上使う人は要注意…医師に聞いたその仕組みと対策|FNNプライムオンライン)



③ 家庭や職場でできる具体策 ― スマホ認知症から脳を守る習慣
「スマホ認知症」は、日々の生活習慣を見直すことで予防・改善が期待できる、“可逆的”な認知機能の低下です。
逆にいえば、無意識のうちに“脳を酷使する生活”が続いてしまうと、パフォーマンスの低下や慢性的な疲労感に悩まされることになりかねません。
ここでは、家庭や職場で今日から実践できる具体的な対策を5つご紹介します。
✅ 1.「デジタル断食」の時間をつくる(Digital Detox)
スマホから意識的に距離を置く「デジタルデトックス」は、脳の疲労回復に効果的です。
- 食事中・就寝1時間前・朝の起床後30分など、「ノースマホ時間」を明確に設定しましょう
- 休日に1日だけ“スマホを触らない日”をつくるのも◎
- 通知のオフ設定や、SNSアプリのログアウトも有効です
Point:脳に「無刺激の時間」を与えることがカギです。
✅ 2.「一点集中のタスク」を意識する(Single-tasking)
脳は本来、マルチタスクに不向きです。
スマホでの情報処理も「調べながら返信」「SNSを見ながら動画」など、“同時処理”が多くなりがち。
- 1つの作業に集中し、終わったら次へ進む
- 仕事でも「ポモドーロ・テクニック」(25分集中+5分休憩)がおすすめ
- スマホ操作時も“目的を1つ”に絞るよう意識を
✅ 3.「脳を休ませる」生活習慣を取り入れる
スマホに奪われた注意力を回復させるためには、脳が“無意識に整う時間”が必要です。
- 短時間の昼寝(10〜20分):記憶の整理と脳のリセットに
- 家事や単純作業:無心になれる活動は脳にとってリラックス効果大
- 散歩・自然との接触:五感を使って脳をリフレッシュ
Point:「頑張る」よりも「休ませる」ことが回復への近道です。
✅ 4.「スクリーンタイム」の管理と可視化
自分がどれくらいスマホに時間を使っているか、意外と自覚していない方が多いもの。
- iPhone・Androidには「スクリーンタイム機能」が搭載されています
- SNSや動画アプリの使用時間に上限を設定
- 家族間で“1日○時間まで”とルール共有しても◎
✅ 5.「記憶する」習慣をあえて取り戻す
スマホ依存が進むと、「覚える」→「すぐ検索する」に脳が切り替わってしまいます。
- 今日あったことを「3つだけ日記」に書く
- 覚えたいことを“手書きメモ”する
- 電話番号や買い物リストなど、あえて覚えてみる
Point:記憶は「使うほど強くなる」筋肉のようなものです。
🌱 習慣を変えれば、脳も変わる
スマホは便利で手放せない存在です。しかし、上手に付き合わなければ、脳のパフォーマンスを知らぬ間に削ってしまう恐れもあります。
「スマホ認知症」は恐れるべき病ではなく、“気づいて行動すれば改善できる”身近なサインです。


④ 「スマホ認知症」対応できるクリニック、病院
🏥 スマホ認知症外来・類似診療を行う医療機関
1. 金町駅前脳神経内科(東京都葛飾区)
日本初の「スマホ認知症外来」を2025年6月12日に開設。オンライン診療対応、問診・認知機能評価・生活指導・投薬まで一貫した対応が特徴です tmhp.jp+6kyodonewsprwire.jp+6kahoku.news+6。
📱 スマホ依存・認知機能低下に対応するクリニック(類似対応)
2. 西春内科・在宅クリニック(愛知県北名古屋市)
「スマホ認知症かもしれない」と感じた場合の受診を推奨。CT検査や問診による対応が可能とされています 。
3. 大石クリニック(依存症専門・全国)
スマホ依存を含む各種依存症に対応。臨床的視点からスマホ依存とその影響に包括的に対応しています。
🧠 物忘れ・認知症外来で相談可能な医療機関
スマホ認知症専門ではありませんが、「もの忘れ」「認知症」の相談が可能な医療機関に相談してもいいかもしれませんね。


⑤ まとめ 〜脳とスマホの、ちょうどいい距離感を〜
「スマホ認知症」という言葉を、私自身も今回のニュースで初めて耳にしました。
最初は少しキャッチーな言い回しだなと感じましたが、掘り下げてみると、現代人が誰しも直面しうる“脳の疲労”にまつわる、非常にリアルな課題であることに気づかされました。
脳は、静かな時間や“無”の感覚の中でこそ、本来の力を取り戻す器官です。
情報があふれるこの時代だからこそ、スマホとうまく付き合いながら、脳に優しい生活を意識することが、健康への第一歩になるのかもしれません。
医療に携わる立場としても、こうした新しい視点を柔軟に取り入れながら、患者さんだけでなく自分自身の生活にも活かしていきたいと思います。
みなさんもぜひ、「スマホを閉じて、脳を開く時間」を、少しだけ意識してみてください📵🧠🌿
KOY
当ブログ他記事:医師殺傷事件 など




