2025年7月8日、NHKによると、日本全国で百日咳(Pertussis)の感染者が急増し、
過去最悪の感染拡大となっていることが報じられました。
この状況を受け、百日咳とは何か、検査や治療法、
そして命のリスクについて解説します。


1. ニュースの内容

- 2025年第27週(6月23日〜29日)、日本全国で3,353人の百日咳患者が発生し、これが連続して過去最高を更新しました。
東京都感染症情報センター - 2025年上半期だけでも累計39,672件となり、2024年の4,096件を大きく上回るペースで推移中です
Vax-Before-Travel - 東京都では特に多く、東京都内での一週間の報告数は234人にのぼっています。
- 今回の流行では、10〜19歳が報告数全体の約60%を占めています
感染症情報提供サイト+8東京都感染症情報センター

2.百日咳とは
百日咳は、百日咳桿菌(Bordetella pertussis)によって引き起こされる高度に伝染性の細菌性呼吸器感染症です。

- 初期症状:風邪に似た鼻水・くしゃみ・軽い発熱・乾いた咳。
- その後2〜6週間にわたり、激しい「痙攣性咳嗽」が続き、「ヒュー」という特徴的な吸気性音を伴いますaxa.com.hk。
- 幼児(特に6か月未満)は咳をほとんどせず、呼吸停止や**チアノーゼ(顔面の紫色化)**を起こすことがあり、極めて重篤な経過もあります。
主な症状
経過は3期に分けられ、全経過で約2~3カ月で回復するとされています。
1. カタル期(約2週間持続) :かぜ症状で始まり、次第に咳の回数が増えて程度も激しくなります。
2. 痙咳期 (カタル期の後に約2~3週間持続):次第に特徴ある発作性けいれん性の咳(痙咳)となります。夜間の発作が多いですが、年齢が小さいほど症状は多様で、乳児期早期では特徴的な咳がなく、単に息を止めているような無呼吸発作からチアノーゼ(顔色や唇の色や爪の色が紫色に見えること)、けいれん、呼吸停止と進展することがあります。合併症としては肺炎や脳症などもあり特に乳児では注意が必要です。
3. 回復期:激しい発作は次第に減衰し、2~3週間で認められなくなります。成人の百日咳では咳が長期にわたって持続しますが、典型的な発作性の咳を示すことはなく、やがて回復に向かいます。全経過で約2~3カ月で回復します。


3.検査は
百日咳の確定診断には主に以下の方法が用いられます:
- 咽頭ぬぐい液からの細菌培養:従来の方法で、培養には時間がかかります。
- PCR検査:短時間で病原体の遺伝子を検出でき、現在最も一般的です。
- また、血液検査で抗体価を測定することもあります。
現在、日本国内では全国の医療機関や保健所と連携して、確定診断およびサーベイランス(感染動向調査)を実施中です。
感染症法に基づく 「五類感染症(全数把握対象)」 に分類されています。
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届出義務:
➡ 医師が診断した場合、7日以内に最寄りの保健所に届出が必要です。
全数把握対象疾患とは:
➡ 患者が1人でも発生すれば、年齢や重症度に関係なく全例報告が求められる疾患。

4.治療やワクチン接種は?
- **抗生物質(マクロライド系:赤霉素、アジスロマイシンなど)**により、発症初期なら症状の悪化を抑え、感染力を低下させることが可能です。
- 重症例(特に乳児)は入院管理が必要で、気道確保や酸素療法、場合により集中治療が行われます。
- 2025年、日本ではマクロライド耐性菌株の報告もあり、大阪・沖縄・鳥取などで検出されています。
感染症情報提供サイト
🔹 百日咳ワクチンの種類と接種スケジュール
🧪 接種されるワクチン
- DPTワクチン(ジフテリア・百日咳・破傷風)
- または DPT-IPVワクチン(+ポリオ)
これらは混合ワクチンとして、小児期の定期接種に組み込まれています。
📅 定期接種スケジュール(生後3か月から)
回数 | 月齢 | 備考 |
---|---|---|
初回接種1〜3回目 | 生後3か月〜12か月未満 | 20〜56日間隔で3回 |
追加接種(4回目) | 初回終了後おおむね1年後 | 1回(多くは1歳半頃) |
✅ DPT-IPV(4種混合)ワクチンで接種されることがほとんどです。
🔹 中学生以降の追加接種は?
実は、日本では中学生以降の追加接種が行われていないのが現状です。
💡 海外では:
- アメリカ・オーストラリア・フランスなどでは
- 11歳〜12歳頃にTdapワクチン(百日咳入り)をブースター接種
- 妊婦・高齢者・介護者への接種も推奨
🇯🇵 日本では:
- 11歳~12歳で接種するのは、Td(ジフテリア・破傷風)ワクチン
- 百日咳成分が含まれておらず、抗体価が低下するのが問題点
- 今回のような10代での大流行にも関係していると指摘されています
🔹 百日咳ワクチンの効果と限界
ポイント | 内容 |
---|---|
効果 | 初回接種後は80〜85%の予防効果があるとされます |
抗体持続期間 | 約5〜10年で抗体が低下し、再感染や無症候キャリアが増加 |
乳児感染源 | 多くは10代〜大人の家族から感染(ワクチン未接種または免疫低下) |

5.命にかかわる?
- **乳児(6か月未満)**では脳炎や肺炎などを併発し、**致死率は1〜3%**に達するリスクがあります。
- 2025年上半期には日本国内で乳幼児の死亡例が4名報告されています。
- 青少年・成人では通常軽症ですが、乳児への感染源となるため、家族内での伝播防止が重要です。

まとめ・呼びかけ
今回の日本における百日咳の流行は、感染者数・重症例・死亡例いずれにおいても異例の拡大となっています。特に乳児にとっては命にかかわる重大な病気です。
乳児のころに接種したワクチンの効果が薄れてくる小学生や中学生が感染の中心になっているほか、家族の中で感染するケースもあるということです。
乾いたせきが連続して出る、強いせきが昼も夜も続く、せきの症状が長引くといった点が特徴的です。
予防策として:
- 乳幼児は定期接種を確実に
- 11〜12歳(または中学入学前)に追加接種も有効とされています
GeneOnline News+11cdc.gov.tw+11Facebook+11cdc.gov.tw。 - 感染症拡大地域(都道府県)ではマスク着用・手洗い・咳エチケットを徹底
- 咳が2週間以上続く場合は早めに医療機関で検査を受診
親御さんや医療関係者の皆さん、そして本ブログをご覧の方々も、ぜひご家庭や職場での感染対策にご協力ください。
KOY
参考資料:厚生労働省HP
当ブログ他記事:夏インフル



