

「ちょっとしたすり傷だから、放っておいても平気でしょ」
そんなふうに思ったこと、ありませんか?
私も多くのケガの方を診察してきましたが、実際に破傷風ワクチンを使用させて頂いてきました。
実は今、「破傷風ワクチンが出荷停止」というニュースが、医療現場をざわつかせています。
そしてこの影響で、けがをしたときに必要な“とても大事なワクチン”が打てなくなるかもしれないという、ちょっと心配な状況が起きています。
「破傷風(はしょうふう)」ってなに?
どうして今そんなに話題になってるの?
私たちは何に気をつければいいの?
この記事では、救急の現場で働く医師の声も交えながら、
この夏に本当に気をつけたい“けがと感染症”の話をご紹介します。

ニュース内容:破傷風ワクチンが“出荷停止”に
Yahooニュース:破傷風ワクチン“出荷停止” 医師が警告「けがしないで」 病院混乱「在庫わずか」

2025年7月、医療関係者を中心に大きなニュースが走りました。
それは、破傷風の予防に使われる「トキソイドワクチン」の出荷が一時的に停止されたというものです。
出荷停止の理由は、ワクチン製造の過程で定期的に行っている検査を再検証する必要が出たため。
そのため、製品が市場に出せなくなっているということです。
この影響で、埼玉県のある病院では、すでに在庫が10回分程度にまで減少。
「通常通り使っていれば、1カ月以内になくなってしまう」という深刻な状況になっています。
■ 破傷風とは?傷口から入る“土の中の菌”
破傷風とは、土の中などにいる細菌(破傷風菌)が傷口から侵入し、感染する病気です。
顔の筋肉がこわばったり、全身のけいれん、さらには呼吸ができなくなったりすることもあり、
**死亡率は10〜20%**とされています。
とくに注意が必要なのは、
- 大雨や冠水で泥水にふれるようなとき
- キャンプや屋外スポーツなどでのけが
といった、“土”や“自然”と接する場面です。

■ 予防のカギは「トキソイドワクチン」
破傷風はワクチンによって予防が可能であり、
70年ほど前までは年間1000人以上の感染があったものの、
近年では年間100人前後にまで抑え込まれています。
この成果の背景にあるのが、まさに「トキソイドワクチン」の普及です。
そのトキソイドが今回、必要なときに手に入らないかもしれないという状況。
日本救急医学会や日本外傷学会も、出荷停止の事実を会員へ周知し、現場では警戒が強まっています。

どのような場合にワクチンを打つ??
破傷風は、一度かかってしまうと命にかかわることもある重い感染症です。
そのため、予防としてのワクチン接種はとても重要です。
● 定期接種としての破傷風ワクチン
実は私たちは、子どもの頃にすでに破傷風ワクチンを接種しています。
これは「定期予防接種(DPT:ジフテリア・百日せき・破傷風の3種混合)」の一部として、生後3か月ごろから数回に分けて打たれます。
さらに、**11歳ごろに追加(DT:ジフテリア・破傷風の2種混合)**を接種するのが日本の一般的なスケジュールです。
しかし、このワクチンによって得られる免疫(抗体)は10年程度で低下するとされています。
つまり、大人になってからは定期的な追加接種が必要なのですが、
日本では成人への定期接種制度がなく、多くの人が知らず知らずのうちに免疫を失っている可能性があります。
● 医療の現場で使われる場面とは?
では、どんなときに破傷風ワクチン(トキソイド)が必要になるのでしょうか?
✅ 外傷(けが)を負ったとき
たとえば、以下のようなケースです:
- サビた釘や鉄くずでの刺し傷
- 泥・土・動物のふん尿が関わるけが
- 野外での転倒や切り傷
- バイク・自転車・交通事故による外傷
こうした傷を負った患者さんが、過去にトキソイド接種を受けているかどうかがわからない・10年以上経過している場合には、
「破傷風トキソイド」の筋肉注射が推奨されます。
また、**明らかに破傷風の発症リスクが高い場合には、「破傷風ヒト免疫グロブリン(TIG)」**を併用す
ることもあります。
● 海外では「10年に1回」の接種が常識に
アメリカやヨーロッパなどでは、成人でも10年ごとの破傷風ワクチン接種が一般的です。
旅行や留学の際に「ワクチン接種証明書」を求められることもあるため、
実は日本よりも接種意識が高い傾向にあります。
- 破傷風ワクチンは、子ども時代に受けても大人になると免疫が切れてくる
- けがをしたときに、「最後の砦」として打つことがある
- 高リスクのけがでは、**ワクチン+抗体製剤(TIG)**が併用されることもある
- 普段から「ワクチンの記録(母子手帳など)」を確認しておくと安心
最後に・・・現場の印象
破傷風菌を発症したのを直接みたことはないですが、発症すると重症になると聞きます。
実際に発症した患者さんがいると地域で少し噂になることもあります。
私が診察し、ワクチンを投与した患者さんも実際になっていないとは限りません、そのような噂を聞くと気を付けないとと、身が引き締まります。
私が実際にワクチンを打つことを考慮する症例は、
・傷が大きい
・傷が深い
・傷が汚い
の3点を主にチェックしています。副作用も少ない印象なので、迷う時は投与するよう心がけています。
今後、一時的にかもしれませんがワクチンが不足するなら、さらに投与する症例を絞っていかなければなりません。
まずは、大きなケガをしないよう気を付けてください!
KOY



