






こんにちは。
みなさんは胆石をご存知でしょうか。
「健康診断で“胆石があります”って言われたんですが、今は特に症状もないので、そのままでいいって言われました。放っておいて本当に大丈夫なんでしょうか?」
こうした質問、外来でもよくいただきます。
胆石と聞くと「手術が必要なの?」「がんにならないの?」と心配になる方も多いですが、実はすぐに治療が必要なケースばかりではありません。
ただし、「様子を見ていい胆石」と「放置してはいけない胆石」があるのも事実。
症状の有無や胆石のタイプ、患者さんの年齢や体質によって、対応は大きく変わります。
この記事では、外科医の立場から「胆石がある」と言われたときに知っておいてほしいこと、放置していいケース・ダメなケースの見分け方について、わかりやすくお話ししていきます。

①胆石って何?
② 放っておいていい胆石の条件
③放置すると危ない兆候
④ 実際の治療方法
⑤まとめ:こんなときは迷わず病院へ
その他の疾患の紹介:虫垂炎


①胆石って何?
胆石(たんせき)とは、胆のうという臓器の中にできる「石(結石)」のことです。
胆のうは、肝臓のすぐ下にくっついている袋状の臓器で、肝臓から作られた胆汁(脂肪を消化する液体)を一時的にためておく“貯蔵庫”のような役割を担っています。

胆石は、この胆汁の成分がバランスを崩して固まることで、コロコロとした結晶のような石になってしまうものです。
大きさは砂粒ほどのものから、1cm以上になるものまでさまざまで、人によっては数個〜数十個できていることもあります。
胆石ができる原因には…
- 食生活(脂っこいものや不規則な食事)
- 肥満・糖尿病
- 加齢や女性ホルモンの影響
- 妊娠や急な体重減少
…など、さまざまな要因が関係しています。
胆石はまったく症状を出さずに何年も見つからないこともあれば、ある日突然、**激しいお腹の痛み(胆石発作)**として現れることもあります。


② 放っておいていい胆石の条件
- まったく症状がない(無症候性胆石)
→ 健診や人間ドックで偶然見つかっただけのケースです。 - 過去に一度も発作(腹痛、発熱、吐き気など)を起こしたことがない
- 胆のうや胆管の炎症を示す所見(血液検査や画像)がない
- 高齢や他の疾患があり、手術リスクの方が大きいと判断される場合
「石がある」と聞くと不安になるかもしれませんが、
胆石は10人に1人が持っているとも言われるほどよくあるものです。
症状がなければ、無理に手術をする必要はなく、“おとなしい石”としてそのまま経過をみることができます。
ただし、定期的なチェック(腹部エコーなど)は忘れずに。
胆石の状態や位置によっては、将来的に症状を引き起こす可能性もあります。
(逆に言うと、症状があれば、または胆嚢炎を起こしたことがあれば手術をすることがかなり多いです。)



③放置すると危ない兆候
胆石が見つかっても、すべてが危険なわけではありません。
ですが、中には**「これは放置してはいけない!」**というサインが現れることもあります。
以下のような症状や所見がある場合は、胆石による合併症の可能性があり、早めの受診・治療が必要です。
🚨 放置すると危ない胆石のサイン
■ 突然の右上腹部の痛み
→ 食後に起こることが多く、数十分〜数時間続くことも。
「胆石発作(胆石疝痛)」の典型です。


■ 発熱や寒気
→ 胆のう炎や胆管炎の可能性。感染を伴う場合は緊急処置が必要になります。

■ 吐き気・嘔吐
→ 胆汁の流れが妨げられ、消化機能に影響が出ているサインかも。

■ 皮膚や白目が黄色くなる(黄疸)
→ 胆石が胆管に詰まり、胆汁が流れなくなっている可能性があります。

■ 血液検査で肝機能(AST・ALT・γ-GTP・ビリルビンなど)が異常
→ 胆汁のうっ滞や肝機能障害の兆候です。
こうした兆候がある場合は、「石が動いて悪さをしはじめた」サイン。
場合によっては、胆のう炎・総胆管結石・膵がん・胆のうがんといった重大な疾患につながることもあるため、早期の診断と治療がとても大切です。
🩺「様子を見る」のは安全なうちだけ
無症状のうちは“静かな石”でも、ある日突然暴れ出すことがあります。
「いつもと違う」「これは変だな」と思ったら、我慢せず、消化器内科や外科を受診しましょう。



④ 実際の治療方法
胆石があるからといって、必ずしもすぐに手術が必要なわけではありません。
治療が必要になるかどうかは、
・「症状があるかどうか」
・「胆石の位置」
・「合併症の有無」
などによって判断されます。
🟢 症状がない場合(無症候性胆石)
- 基本的には経過観察
→ 痛みや発熱などの症状がなければ、多くの場合は治療の必要はなく、定期的なチェックだけで済みます。
🔴 症状がある場合(胆石発作・胆のう炎など)
- 腹腔鏡下胆のう摘出術(ラパ胆)
→ 現在の標準治療です。
お腹に小さな穴を数カ所あけてカメラと器具を入れ、胆のうごと石を取り出す方法。
体への負担が少なく、入院期間も短くて済みます(通常2~5日程度)。 - 胆管に石が詰まっている場合(総胆管結石)
→ 内視鏡(ERCP)によって石を取り除く処置が行われることもあります。
その後に、胆のう摘出を行うのが一般的です。 - 重症胆のう炎や膿瘍形成などの合併症がある場合
→ 状態に応じて抗生剤治療を先行したり、ドレナージ(胆汁を体外に逃がす処置)を先に行うこともあります。


💬 手術は怖くない?
「手術」と聞くと不安に思う方もいらっしゃいますが、
現在では多くの胆のう手術が“腹腔鏡下”で安全に行われており、日常生活への早期復帰が可能です。
術後の食事制限もほとんどなく、胆のうを取った後も多くの方は普段通りの生活を送ることができます。
手術については、また後日ブログで紹介できればと考えております。



⑤まとめ:こんなときは迷わず病院へ
胆石は、症状がなければ経過観察でも大丈夫なことが多いですが、
ある日突然「激しい痛み」や「体調の変化」としてサインを出すこともあります。
次のような症状がある場合は、**「放っておくのは危険かも」**というサインかもしれません。
🛑 こんな症状があれば、早めに病院へ
- 食後に右の上腹部がギューッと痛む
- 発熱や吐き気・嘔吐を伴う
- 皮膚や白目が黄色くなる(黄疸)
- 過去に「胆石がある」と言われていて、症状が出てきた
- 血液検査で肝機能の異常を指摘された
放置してしまうと、胆のう炎や胆管炎、膵炎など命に関わる状態に進行する可能性もあります。
「様子を見ていいのかな…」「ちょっと不安…」と思ったときには、
どうか一人で悩まず、消化器内科や外科を受診してください。
症状がない胆石は慌てなくて大丈夫。
でも、症状があるときは“からだのSOS”かもしれません。
早めの診断・治療で、ぐっと安心につながります。
KOY



