術後のお腹の痛み、放っておいて大丈夫?消化器外科医の視点から

① 術後のお腹の痛み、不安になりますよね

② 痛みはある程度“普通”です:術後の痛みのメカニズム

③ こんな痛みは“様子見OK”

④ こんなときは“要注意”

⑤ 消化器外科医からのアドバイス:不安を感じたら一人で抱え込まないで

手術となる病気・ブログから:虫垂炎サイン虫垂炎手術胆石

参考:手術後痛み.com

https://opeitami.sn-chiryo.com/cause-solution/

①術後のお腹の痛み、不安になりますよね

手術が無事に終わってホッとしたのも束の間、


「なんだかお腹が痛む…これって大丈夫なの?」と不安になる方は多くいらっしゃいます。

とくにお腹の手術後は、体の中でさまざまな回復反応が起きており、
“痛み”という形でサインを出していることがあります。

けれど、「これは自然な経過なのか?」「何か異常のサインなのか?」
その判断がつかず、不安を抱えたまま過ごしてしまう方も少なくありません。

この記事では、消化器外科医の視点から
術後の「普通の痛み」と「注意すべき痛み」の違いをわかりやすく解説します。


正しい知識を知ることで、あなたの不安が少しでも和らぐことを願っています。

②痛みはある程度“普通”です:術後の痛みのメカニズム

術後のお腹の痛みは、ある程度「自然な反応」として誰にでも起こりうるものです。


これは、身体が回復するために起こしている正常な反応のひとつです。

手術というのは、体にとって一種の「外傷」です。


皮膚だけでなく、その奥の筋肉や臓器にもメスが入り、組織が一時的に傷つきます。


その傷を治そうと、体内では炎症反応組織修復が活発に行われます。

また、開腹や腹腔鏡などの手術では、腸が一時的に動きにくくなることがあり、


その影響でお腹の張りや鈍い痛み、ガスの不快感を感じることもよくあります。

さらに、筋肉層の縫合による引きつれ感や、動作によってつっぱるような痛みを感じることもあります。


これらは術後数日から1〜2週間ほど続くこともあり、徐々に軽快していくのが通常です。

③こんな痛みは“様子見OK”

術後の痛みには、“自然な回復過程の一部”として起こるものがあります。


以下のような痛みであれば、過度に心配する必要はなく、体が回復に向かっているサインとも言えます。

✅ 徐々に軽くなってきている痛み

日にちが経つごとに「前よりマシになってきたな」と感じられる痛みは、
炎症が落ち着き、組織が修復されてきている証拠です。

✅ 動いたときに感じるチクチク・ツッパリ感

立ち上がるときや体をひねったときに「ピリッ」とする痛みは、
皮膚や筋肉の縫合部位が引きつれていることによるもの。
多くの場合、時間とともに改善していきます。

✅ 排便やガスで軽くなるお腹の張りや痛み

腸の動きが少しずつ戻ってくる段階では、ガスが溜まりやすく、
お腹が張って鈍痛を感じることがあります。
排便やおならの後にスッと楽になるようであれば、腸が正常に動き始めたサインです。

こうした痛みがあるときは、体を冷やしすぎない・無理をしすぎない・こまめに動くといったセルフケアも効果的です。


ただし、日ごとに痛みが強くなるようなときは、この後ご紹介する「注意すべき痛み」に該当することもあるため、慎重に様子を見てくださいね。

私の経験上の話ですが、手術してからしばらく経っても雨や曇りの日に傷が痛むと言う方が多くいらっしゃる印象があります。

気圧も関係しているのでしょうか。手術をして数年たってもこのようなことが多々あるようです。

④こんなときは“要注意”

術後の痛みの中には、「自然な経過」では済まされない、
合併症や異常のサインである可能性もあります。


以下のような症状がある場合は、自己判断せず、早めに医療機関へ相談することが大切です。

⚠ 痛みがどんどん強くなっていく

術後数日が経っているにもかかわらず、
日に日に痛みが増している場合は要注意です。
感染や癒着、腸閉塞などの兆候であることもあります。

⚠ 動かなくてもズキズキ痛む、または急に激痛が走る

安静にしていても持続する鋭い痛みや、
急に走るような激しい痛みは、内部で何らかの異常が起きている可能性があります。

⚠ 発熱・吐き気・お腹の張りがひどい

痛みに加えて発熱(37.5℃以上)、吐き気・嘔吐、
お腹の張りが強いといった症状がある場合、
腹膜炎や腸のトラブルを疑う必要があります。

⚠ 傷口が赤く腫れている、膿が出ている

皮膚の炎症や感染が起きているサインです。
「ちょっと赤いだけ」と思っても、放置すると悪化することがあります。

このような症状があるときは、
「様子を見よう」と思わず、できるだけ早く主治医や病院に連絡することが大切です。


術後のトラブルは、早期発見・早期対応が回復のカギになります。

⑤消化器外科医からのアドバイス:不安を感じたら一人で抱え込まないで

術後の痛みや体調の変化に対して、「これって普通なのかな…」と不安を抱くのは当然のことです。


でも、その不安を一人で抱え込まないでほしいと、私は強く思っています。

実際、外来では「こんなことで受診していいのか迷った」とおっしゃる患者さんも多くいらっしゃいます。


でも、“何もなかった”という確認こそが、安心への第一歩です。

私たち医師は、「気にしすぎかも…」という声も、
「ちょっと心配なんです」という相談も、とても大切なサインとして受け止めています。

術後の回復過程は、個人差が大きいものです。


年齢、体力、手術の内容によって、痛みの出方や治り方も様々です。


だからこそ、「自分の体のことは自分にしかわからない」感覚を信じて、気になることは遠慮なく医療者に伝えてください。

医療者側の都合ですぐに診察することが困難なことも多々あります、電話でもいいのでコミュニケーションをとっていけるのが理想ですね。

⑥まとめ

手術後のお腹の痛みは、**回復の過程でよく見られる“普通の痛み”**であることが多く、
必要以上に心配しなくてもいいケースもたくさんあります。

一方で、「いつもと違う」「なんとなくおかしい」と感じるときの直感は、とても大切です。
痛みの種類や変化の仕方によっては、早めの対処が必要な“異常のサイン”であることもあります。

✅ 覚えておきたいポイント

  • 徐々に軽くなる痛みやチクチク感は様子見OK
  • ズキズキ続く強い痛みや発熱は要注意
  • 「迷ったら相談」が安心への近道

術後は体も心もデリケートな時期。

不安を感じたときは、ひとりで抱え込まず、信頼できる医療者に相談することが一番の安心材料です。

あなたの回復がスムーズで、安心して日常に戻れるよう、

この記事が少しでもお役に立てればうれしいです。 

KOY