病院経営は、どうすれば立て直せるのか
― 医療を守り続けるために、いま本当に考えるべきこと ―

国の政策から見る、病院経営が苦しくなる本当の理由
病院経営を語るとき、
「現場の努力が足りない」
「経営が下手なのではないか」
と言われることがあります。
しかし実際には、
多くの病院が赤字になりやすい“国の仕組み”の中で運営されている
という事実があります。
まずは、その前提から整理します。
国は「医療費を増やさない」方針を取り続けている
日本は世界でも有数の高齢化社会です。
医療の需要は年々増えています。
本来であれば、
「患者が増える=医療費も増える」
のが自然です。
しかし国は長年、
医療費の総額をできるだけ抑える政策を続けています。
その手段として使われているのが、
「診療報酬の抑制」です。
診療報酬とは何か
診療報酬とは、
「この検査はいくら」
「この手術はいくら」
と、国が決めた医療の値段表のようなものです。
病院はこの金額に従って、
医療を提供するしかありません。
つまり、
- 原材料費が上がっても
- 人件費が上がっても
医療の値段は簡単には上がらない
という仕組みになっています。
なぜ病院は赤字になりやすいのか
ここが、病院経営の最大のポイントです。
診療報酬は、
「平均的な病院が、平均的に運営した場合」
を想定して決められています。
しかし現実の病院は、
- 救急を断れない
- 夜間・休日も対応する
- 高齢者・重症患者が多い
こうした負担を多く抱えています。
つまり、
国が想定している「標準モデル」よりも、実際の病院はコストが高い
のです。
この差が、赤字の正体です。
昔と今で、何が違うのか
「昔は病院経営がここまで苦しくなかった」
そう感じる医療者は多いと思います。
実際、決定的に違う点があります。
昔は「人の我慢」で成り立っていた
かつての医療現場では、
- 長時間労働
- 当直明けでも通常勤務
- サービス残業
が、半ば当たり前でした。
これは良い状態ではありませんが、
人の我慢によってコストが抑えられていた
という側面があります。
今はそれが許されなくなった
現在は、
- 働き方改革
- 医療安全
- ハラスメント対策
などにより、
「無理を前提にした医療」は許されなくなっています。
これは正しい変化です。
しかし一方で、
人件費や体制維持コストは確実に増えました。
診療報酬は大きく上がらないまま、
支出だけが増えた。
これが、今の病院経営です。
それを踏まえて、国がやるべきこと
まず国が向き合うべきなのは、
現場とのズレを認めることです。
国に求められる具体的な対応
1つ目は、
不採算医療を「不採算のまま」放置しないことです。
救急、産科、小児科、地域医療。
これらは市場原理では成り立ちません。
→ 国が「公共インフラ」として、
別枠で支える制度設計が必要です。
2つ目は、
人を守る体制にお金がかかることを前提にすることです。
安全な医療は、
「安く」「少人数で」
提供できるものではありません。
ちょうど、1月15日にこんなニュースがでておりました。
初診料・再診料・入院基本料を引き上げへ、診療報酬改定の骨子案了承…医療機関の経営安定化図る
それを踏まえて、病院がやるべきこと
一方で、
「国が悪いから仕方ない」で終わらせることもできません。
病院側に求められる現実的な対応
1つ目は、
すべての医療を担おうとしないことです。
自院の役割を明確にし、
できること・できないことを線引きする。
これは逃げではなく、持続可能性のための判断です。
2つ目は、
経営を“医療の敵”にしないことです。
経営を語ることは、
医療を守るための行為です。
医療者と経営側が、
「同じゴールを見ている」
という認識を持つことが不可欠です。
おわりに:責任を分けて考える
病院経営が苦しいのは、
誰か一人の責任ではありません。
国の制度
社会の変化
医療現場の構造
それぞれが重なった結果です。
だからこそ、
国は制度で支える責任を持ち、
病院は現実的な選択をする責任を持つ。
この役割分担を、
今こそ本気で考える必要があります。
KOY
KOYブログ他記事:なぜ病院は苦しいのか、卵食べ過ぎ
他サイト:フォーネスサイト、リージョンマネージメント