
医師という職業は、患者の命と尊厳を守る存在として、社会から強い信頼を寄せられている。
体に直接触れる診療や処置が日常的に行われる医療現場では、その信頼があるからこそ成り立っている関係性があると言っても過言ではない。
しかし近年、その信頼を根底から揺るがすような事件が繰り返し報じられている。
医療行為を行う立場にある医師が、患者に対してわいせつ行為を行ったとして処分や逮捕に至るケースだ。
「なぜ医療現場で、このようなことが起きるのか」「これは一部の異常な個人の問題なのか」──多くの人が疑問と不安を抱くのも無理はない。
こうした事件は、単なる不祥事として消費されがちだが、その背後には医療特有の構造や、患者と医療者の間に存在する力関係、そして組織としての課題が潜んでいる可能性がある。問題を正しく理解しなければ、同様の事件は今後も繰り返されてしまうだろう。
この記事では、最近報じられた医師によるわいせつ事件をきっかけに、医療現場で性被害が起こり得る背景や構造的な問題点、そして私たちが向き合うべき課題について冷静に整理していきたい。
ニュース:病室でわいせつ行為 大久保病院の研修医を懲戒解雇 都立病院機構


東京都立病院機構は14日、入院していた女性患者にわいせつな行為をしたとして、大久保病院(新宿区)に勤務していた研修医の男性を懲戒解雇した。
同機構によると、男性は2025年11月25日夜、女性の病室を訪れ、わいせつな行為をしたとしている。初診で指導医と共に女性を診察したといい、男性は事実を認めた上で「好意を持っていた。真摯(しんし)に反省している」と話しているという。
同機構は警察に相談しており、「医療従事者であるにもかかわらず社会的信頼を失墜させる事案で大変遺憾だ。再発防止に努める」とコメントしている。【柳澤一男】
事件の詳細:人物像

人物名の記載はありませんでした。
逮捕まで至っていないためでしょうか。
過去に援助交際で逮捕された方は実名が公表されていました・・・。
医師はすべて順調にいけば24歳で研修医になれます。今回事件を起こした研修医の年齢は31歳です。
その歳で研修医ということは大学受験で浪人、大学で留年、医師国家試験で国師浪人、大学再受験などの人物だと思われます。
今後、時間が経てば医師として再就職する可能性があります。研修医が終了していないので再就職先はかなり限られるとは思いますが。
性犯罪に対する刑罰の基本的な考え方

性犯罪は、被害者の身体的・精神的尊厳を著しく侵害する犯罪であり、近年の法改正によって厳罰化の方向が明確に示されている。
特に「立場を利用した性行為」や「抵抗できない状況を利用した行為」は、強い非難の対象となる。
医師という職業は、患者との間に明確な力関係が存在するため、一般人よりも重く評価される傾向がある点も重要だ。
不同意わいせつの刑罰
不同意わいせつ罪は、相手の自由な意思に基づく同意がないまま、わいせつな行為を行った場合に成立する。
刑罰
- 6か月以上10年以下の拘禁刑
罰金刑はなく、必ず実刑または執行猶予付きの拘禁刑となる点が特徴である。
医療現場では、
- 「診察の一環だと思わせた」
- 「拒否しにくい雰囲気だった」
と判断されれば、明確な暴行がなくても成立する可能性がある。
準強制わいせつの刑罰
準強制わいせつは、相手が抵抗できない状態にあることを利用して、わいせつな行為を行った場合に成立する。
刑罰
- 6か月以上10年以下の拘禁刑
不同意わいせつと同程度の重さだが、
- 睡眠中
- 麻酔・鎮静後
- 意識障害や精神的混乱状態
といった状況を利用した点が、悪質性として強く評価される。
医療現場では特に、「患者が抵抗できなかった」という事実が重視される。
強制性交等罪の刑罰
強制性交等罪は、性犯罪の中でも特に重く処罰される犯罪である。暴行・脅迫、または抵抗不能な状態を利用して性交やそれに準ずる行為を行った場合に成立する。
刑罰
- 5年以上の有期拘禁刑
上限は事案によっては20年近くに及ぶ可能性もあり、執行猶予がつかない実刑判決となるケースも少なくない。
医師が、
- 治療を盾に従わせる
- 逆らえば不利益があると思わせる
といった状況を作り出した場合、明確な暴力がなくても「強制性」が認定されうる。
刑罰の比較表
| 罪名 | 行為の内容 | 刑罰 | 罰金刑 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 不同意わいせつ | 同意のないわいせつ行為 | 6か月以上10年以下の拘禁刑 | なし | 同意の有無が最大の争点 |
| 準強制わいせつ | 抵抗不能状態を利用 | 6か月以上10年以下の拘禁刑 | なし | 被害者の状態が重視される |
| 強制性交等罪 | 暴行・脅迫または抵抗不能状態での性交等 | 5年以上の有期拘禁刑 | なし | 極めて重罪、実刑率が高い |
刑事罰だけでは終わらない現実
医師の場合、刑罰に加えて以下の処分が重なる可能性がある。
- 医師免許の取消・停止
- 懲戒解雇
- 社会的信用の失墜
- 民事訴訟による損害賠償責任
刑事裁判が終わっても、職業人生が事実上終わるケースは少なくない。
この章のまとめ
性犯罪に対する刑罰は決して軽くなく、特に医療者が関与した場合、
「立場の悪用」「被害者の弱さ」を理由に、より厳しく評価される。
白衣や専門知識は、犯罪を正当化する理由にはならない。
むしろそれらは、より重い責任を負う立場にあることの証明でもある。
なぜ医療現場で性暴力が起きるのか 原因と対策

医師によるわいせつ事件が報じられるたびに、「なぜ医療現場でそのようなことが起きるのか」という疑問が投げかけられる。これらの事件は、単に一部の医師の資質や人格の問題として片付けてしまいがちだが、実際には医療という特殊な環境そのものが、性暴力を見えにくくし、起こりやすくしてしまう構造を持っている。
力関係のアンバランス
医療現場では、患者と医療者の間に明確な力関係の差が存在する。患者は自身の健康や命を医療者に委ねており、「逆らってはいけない」「嫌だと言ったら診療に影響が出るかもしれない」と感じやすい。
その結果、本来であれば拒否できる行為であっても、沈黙や曖昧な態度が「同意」と誤って解釈されてしまう危険性がある。
専門性の誤認
医療行為は、患者にとって内容が分かりにくいことが多い。診察や処置の一環なのか、不必要な身体接触なのか、その線引きを患者自身が判断できない場面も少なくない。
この「専門性の壁」が、加害行為を医療行為のように見せかけてしまい、被害に気づくのが遅れたり、被害を訴えることをためらわせたりする要因となる。
組織体制の問題
医療機関によっては、指導医や上司による監督が十分に機能していないケースもある。密室で行われる診察、忙しさを理由にしたチェック体制の甘さ、内部通報のしにくさなどが重なると、不適切な行為が長期間見過ごされてしまうことがある。
「問題を表に出したくない」という組織防衛の意識が、結果的に被害を拡大させてしまう場合も否定できない。
倫理教育の欠如
医学知識や技術の教育に比べ、医療倫理や患者の人権に関する教育が十分とは言えない現場も存在する。
「してはいけないこと」を明確に学ぶ機会が乏しいまま臨床に出ることで、無自覚な境界侵犯が起きたり、悪質な行為を抑止できなかったりするリスクが高まる。
これらの要因が複雑に絡み合うことで、医療現場での性暴力は見えにくく、声を上げにくい問題となっている。そのため、単純に刑罰を重くするだけでは、根本的な予防にはつながらない。
防止と対応のポイント(医療界の課題)
医療現場での性暴力を防ぐためには、個人の倫理観に頼るだけでなく、組織としての仕組み作りが不可欠である。
教育・研修の充実
医学生や研修医の段階から、医療倫理、患者の権利、性暴力防止に関する教育を必修とし、具体的な事例を通じて学ぶことが重要である。「どこからがアウトなのか」を明確に示すことで、抑止力を高めることができる。
早期発見の仕組み
匿名通報制度や第三者相談窓口を整備し、患者や職員が安心して声を上げられる環境を作る必要がある。問題が小さいうちに気づき、対応できる仕組みがあれば、重大な事件に発展する前に防ぐことが可能となる。
組織的対応の徹底
不適切行為が発覚した場合に、曖昧な対応や身内擁護を行わず、明確なルールに基づいて処分する姿勢が求められる。病院全体として「許さない」というメッセージを示すことが、再発防止につながる。
法的・被害者支援の充実
被害者が孤立せず、安心して相談・通報できる体制の整備も欠かせない。心理的ケアや法的支援を含めたサポート体制を用意することで、被害者の回復と再発防止の両立が可能となる。
医療現場での性暴力は、決して個人の問題だけではない。
構造を直視し、組織と社会全体で向き合うことこそが、信頼される医療を守るために必要な姿勢だと言えるだろう。
まとめ
医師が患者さんに対しわいせつ行為を行うというニュースは年に数回は目にします。
実際に私が今まで働いた病院では、入院中にそのような行為が問題になったことはありませんでしたが、公の場でのわいせつ行為、検査中の盗撮、援助交際など様々な性的な問題は発生していました。
病院という神聖で特殊な環境ではありますが、それ以外の仕事や場所と同じようにそのような危険性ははらんでいるということです。
その事件をみると、まさか医師が!、まさか病院で!と思いがちですが、職員をきちんと教育して、ゼロになることは難しいかもしれませんが、みんなで未然に防がなければいけません。
安心してきてもらえる病院になるようこれからも心がけていきたいですね。
KOY