なぜ病院は苦しいのか?医療現場から見た“経営難”の本当の理由

「病院は安定している」「医療は国に守られている」
そんなイメージを持っている方は多いかもしれません。

しかし実は今、日本中の病院が、静かに、しかし確実に苦しくなっています。
救急医療を担う総合病院も、身近な地域の中小病院も例外ではありません。

ニュースではあまり大きく取り上げられませんが、
「赤字で運営が立ち行かない」「人件費や光熱費が払えない」
そんな声が、医療現場から次々に聞こえてきています。

なぜ、人の命を守るはずの病院が、経営難に陥っているのでしょうか。
それは決して「患者が減ったから」や「医師が怠けているから」ではありません。

このブログでは、普段あまり語られることのない
**病院経営の“裏側”**を、できるだけ分かりやすくお伝えします。

ニュース① 東千葉メディカルセンターが経営難、累積赤字29億円 迫る債務超過

千葉県東部の中核病院「東千葉メディカルセンター」(MC、東金市)が2025年度決算で再び債務超過に陥る見通しが強まり、経営難が再燃している。設立団体の東金市などは県や周辺自治体に財政支援を求めているが、見通しは立たず、経営立て直しへの道筋は不透明だ。

24年度の赤字は約10億円

 MCは14年、県立東金病院の閉院に伴い、東金市と九十九里町を設立団体として開業した。横芝光町から勝浦市までの17市町村からなる「山武長生夷隅保健医療圏」で唯一、重篤患者を治療する救命救急センターがある。救急、小児、周産期など地域に欠かせないが採算性に乏しい診療科を担い、経営は苦しい。

24年度は最終(当期)損失が約10億円に拡大して累積赤字は約29億円になり、純資産は約5億円に縮んだ。25年度上半期も6億円を上回る赤字で、下半期も赤字なら債務超過への転落が現実味を帯びる。

 MCは開業当初から毎年10億円以上の赤字基調で、15年度から6年連続で債務超過に陥った。18年度に県から30億円の財政支援を、20~23年度には国から新型コロナ対策で約78億円を受けて、一時的に債務超過から脱出。しかし、そうした支援は途絶え、物価や人件費の高騰が重なり、経営は急速に悪化した。

断られた支援

 病院の経営をチェックする監事の試算では、24年度の救急医療は4億4000万円の赤字、周産期医療も7000万円の赤字だ。救急の受け入れた患者数は2788人で、そのうち3割が東金市と九十九里町から、残り7割は2市町以外だった。

 2市町はMCの運営費として10年間で約26億円を払ったが、近隣の市町村は負担していない。東金市幹部は「他の自治体に支援を要請したことがあるが、どこも財政が厳しく、色よい返事をもらえなかった」と明かす。

このため鹿間陸郎・東金市長と浅岡厚・九十九里町長は昨年11月、県庁を訪れ、救急医療や小児・周産期医療に対する県の補助制度の創設や、他の自治体も負担する仕組み作りを県主導で進めることを要望した。

 ただし、県の担当者は取材に対し、県は過去に多額の支援をしており、追加支援は「今のところ考えていない」と説明する。東金市幹部は「東金市と九十九里町だけで赤字は背負えないが、病院をつぶすわけにもいかない。打開策を探りたい」と話す。【高橋秀郎】

ニュース② 町田市民病院、市から20億円借り入れ 全国で広がる病院経営難

東京都町田市は、厳しい経営状況に直面している町田市民病院(440床)に、近く20億円の貸し付けを行う。深刻な赤字を背景に減少した現金残高を補うのが目的で、貸付金は病院職員の給与支払いなどに充てる。資金不足への対応として同市が市民病院に長期貸し付けを行うのは初めて。【鮎川耕史】

 町田市民病院は市内で唯一の公立病院。都の2次救急医療機関として重症患者を受け入れるなど、地域医療の中核的な役割を担っている。

しかし、近年は医療機器や薬品などにかかる「材料費」の増加や、賃金のベースアップに伴う人件費の上昇により財政状況が悪化。2024年度の経常収支は約16億円の純損失となった。25年度は約20億円の純損失となる見通しだ。

 こうしたなか、職員への給与支払いや企業債の償還に充てるための現金残高も減少。今年4月分までの給与支払いに必要な約15億円と、3月に行う企業債の償還に必要な約5億円を確保するため、市からの資金調達が必要となった。貸付期間は約10年。貸付金利は0・5%となる見込み。

町田市民病院は「地方公営企業」として独立採算を原則とするとともに、必要な経費の一部を市の一般会計から繰り入れている。市が策定した22~26年度の市民病院中期経営計画では、26年度の一般会計からの繰入金は12億5000万円とされている。

経営難、全国で

 物価高騰や人件費の上昇により病院が赤字経営に陥るケースは全国に広がっている。診療報酬の改定が物価変動などに追いついていないとの指摘もある。

とりわけ、地域医療の拠点として収益性の低い部門も担う公立病院の経営は厳しい。総務省によると、24年度決算で、経常収支が赤字となった公立病院は全体の83・3%を占めた。

 各病院が経営改善の道を模索するなか、町田市民病院は、医療機関を専門とするコンサルティング会社の支援を受けることを決め、昨年11月に2年間の契約を結んだ。経営データの分析や職員への聞き取りなどを通じ、収支の健全化をサポートしてもらうのが狙いだ。

他の医療機関との連携も始めている。昨年は町田市内にある11の病院と意見交換を行う会合を初めて開いた。今後は、それぞれの特長を生かした医療の役割分担や、病院間での患者の紹介を円滑に行う態勢づくりを検討するという。

 服部修久・町田市民病院事務部長は「公立病院としての機能をより充実させながら、メリハリのある経営を重視していきたい」と話している。

医療現場から見た“経営難”の本当の理由

「病院は国が支えているから、経営は安定している」
「医療機関は儲かっているはず」

多くの方が、こうしたイメージを持っているかもしれません。
しかし現実には、全国の病院の多くが経営的に非常に苦しい状況にあります。

では、なぜ病院はこれほどまでに大変なのでしょうか。
医療現場で働く立場から、理由を一つずつ、できるだけ分かりやすく説明します。

① 病院は「自由に値段を決められない」

まず知ってほしいのは、
病院は診療の値段を自分たちで決められないという点です。

医療の料金は「診療報酬」と呼ばれ、国が細かく決めています。
どの病院でも、同じ検査・同じ治療であれば、基本的に同じ金額です。

そのため、

  • 物価が上がっても
  • 人件費が上がっても

すぐに収入を増やすことができません。

一般の企業であれば「値上げ」という選択肢がありますが、病院にはそれができないのです。

② 忙しくなるほど赤字が増えることもある

意外に思われるかもしれませんが、
患者さんが増えれば増えるほど、病院が苦しくなることがあります。

理由はシンプルです。

患者さんが増えると

  • 医師や看護師の負担が増える
  • 検査や治療に使う材料が増える
  • 夜間や休日対応が必要になる

つまり、コストがどんどん増えていくのです。

一方で、診療報酬は決まっているため、
「頑張って診療しても、思ったほど収入が増えない」
という状況が起こります。

③ 医療は“人”に頼る仕事。人件費がとても重い

医療は機械だけでは成り立ちません。
医師、看護師、薬剤師、検査技師、事務スタッフなど、多くの人が関わって初めて成り立つ仕事です。

さらに病院は、

  • 24時間
  • 365日

患者さんを受け入れ続けなければなりません。

その結果、病院の支出の中で最も大きな割合を占めるのが人件費です。

人を減らせば医療の安全が保てない。
増やせば経営が苦しくなる。
この難しいバランスの中で、病院は常に悩み続けています。

④ 医療機器や設備に、とてつもないお金がかかる

CTやMRI、内視鏡、手術機器など、病院にある医療機器はとても高額です。
数千万円、場合によっては数億円するものも珍しくありません。

しかも、

  • 古くなれば交換が必要
  • 定期的な点検や修理が必要

と、導入後もお金がかかり続けます。

「最新の医療を提供するために必要」
「でも経営的には大きな負担」
これが病院の現実です。

⑤ 地域のために頑張るほど、経営は苦しくなる

救急医療や高齢者医療、小児科や産科などは、
地域にとって欠かせない医療です。

しかし、これらの分野は

  • 手間がかかる
  • 人手が必要
  • 採算が合いにくい

という特徴があります。

特に公立病院や地域の中核病院では、
「赤字と分かっていても、やめるわけにはいかない医療」
を担っています。

その結果、
地域を支えれば支えるほど、病院が苦しくなる
という矛盾が生まれてしまいます。

⑥ それでも病院は、医療を止められない

病院は利益を追求する企業ではありません。
命を守り、社会を支える場所です。

だからこそ、

  • 経営が厳しくても
  • 人手が足りなくても

医療は止められません。

現場では、多くの医療者が使命感と責任感で支え続けています。

病院が経営的に苦しい理由(①~⑥ まとめ表)

番号理由一言でいうと一般の方向けの説明
値段を自由に決められない値上げできない医療費は国が決めており、病院は自由に料金を上げられません。物価や人件費が上がっても、すぐに収入を増やすことができない仕組みです。
忙しいほど赤字になることがある頑張るほど苦しい患者さんが増えると人手や医療材料が必要になりますが、診療報酬は一定のため、コストばかりが増えてしまうことがあります。
人件費の負担が大きい医療は人の仕事医師や看護師など多くの人が24時間体制で働いています。安全な医療を守るために人は減らせず、人件費が経営を圧迫します。
医療機器・設備が高額設備にお金がかかるCTやMRIなどは数千万円~数億円。導入後も点検や更新が必要で、病院の固定費として重くのしかかります。
地域医療ほど採算が合わない地域のための赤字救急医療や高齢者医療、小児科・産科などは地域に不可欠ですが、手間がかかる割に利益が出にくい医療です。
医療を止められない使命感で支えている病院は利益優先の企業ではなく、命を守る場所です。経営が厳しくても医療を止められず、現場の努力で成り立っています。

医療が当たり前であり続けるために

病院の経営難は、医療者だけの問題ではありません。
それは、私たち自身が将来どんな医療を受けられるかに直結しています。

少しだけ医療の裏側を知ることで、
病院や医療者を見る目が変わるかもしれません。

医療が“当たり前”であり続けるために。
この現実を、ぜひ多くの人に知ってもらえたらと思います。

KOY

KOYブログ:痛風/王様の病気痛風タミフル

他サイト:日本病院会