
― 想像以上に古く、そして恐ろしいインフルエンザの歴史 ―
冬になると毎年のように話題になるインフルエンザ。
多くの人にとっては「強めの風邪」という印象かもしれません。
しかし実際の
インフルエンザは、人類の歴史を何度も揺るがしてきた巨大な感染症です。
しかもその歴史は非常に古く、
医学やワクチンが存在しない時代から人間を苦しめてきました。
そして現在もなお、
完全に消えることなく毎年流行を繰り返しています。
この記事では
- インフルエンザはいつから存在するのか
- 昔はどれほど恐ろしい病だったのか
- なぜ現代でも消えないのか
このテーマを、歴史を追いながら
読み物として面白く、かつ医療的視点も交えて解説していきます。
参考HP:インフルエンザ情報サービス
インフルエンザはいつから存在するのか?

インフルエンザの起源を正確に特定することはできません。
しかし確実に言えることがあります。
少なくとも2000年以上前から存在している
ということです。
最も古い記録のひとつは、
紀元前400年頃の古代ギリシャ。
医学の祖ヒポクラテスが
- 突然の高熱
- 咳
- 全身の倦怠感
- 多数の人が同時に発症
といった症状を伴う病気を記録しています。
これは現代のインフルエンザの臨床像と非常に似ており、
「インフルエンザ様疾患」であった可能性が高いと考えられています。
当時はウイルスという概念はなく、
原因は
- 神の怒り
- 悪い空気
- 季節の変化
- 星の配置
などと考えられていました。
それでも人々はすでに
この病気は突然広がり、多くの人を同時に倒す
という特徴を理解していました。
つまりインフルエンザは
文明の誕生とほぼ同時期から存在していた可能性が高い感染症なのです。
「インフルエンザ」という名前の由来

現在使われている「influenza」という言葉は、
14〜16世紀のイタリアで誕生しました。
語源は
influentia(影響)
当時のヨーロッパでは、流行病は
- 寒さの影響
- 天体の影響
- 神の意思
によって起こると信じられていました。
つまりインフルエンザとは
何かの“影響”で突然広がる病
という意味だったのです。
現代の医学から見れば非科学的ですが、
中世ヨーロッパの人々はすでに
- この病気が周期的に流行する
- 多くの人が同時に感染する
という特徴を理解していました。
つまりインフルエンザは
古代から恐れられてきた流行病だったのです。
医学が未発達だった時代の恐怖

現代では
- ワクチン
- 抗インフルエンザ薬
- 抗生物質(細菌性肺炎対策)
- 集中治療
があります。
しかし昔はこれらが一切ありませんでした。
つまり
感染したら、あとは体力頼み
という状況です。
高齢者や子どもはもちろん、
健康な成人でも命を落とす可能性がありました。
特に恐ろしかったのは
二次性細菌性肺炎です。
インフルエンザ感染後、
肺炎を起こして死亡する例が多く、
当時は抗生物質がないため治療不能でした。
1580年:史上初の世界的パンデミック
歴史に残る最初の大規模パンデミックは
1580年の流行です。
アジアで発生したとされ、
ヨーロッパ・アフリカへと拡大しました。
当時の記録には
- 王族や貴族も感染
- 都市が機能停止
- 教会の鐘が鳴り続ける(死者多数)
といった記述があります。
感染力は極めて強く、
数週間で都市全体が麻痺するほどでした。
現代でいうロックダウンに近い状態が、
自然発生的に起きていたのです。
18〜19世紀:繰り返される大流行
その後もインフルエンザは
数十年おきに世界規模で流行します。
特に18〜19世紀には
- 1729年
- 1781年
- 1830年代
- 1889年
など、複数回の大流行が記録されています。
1830年代の流行では
- 医師や看護師も倒れる
- 軍隊の活動停止
- 経済活動の停滞
といった社会的混乱が起きました。
ここで初めて人々は
この病気は空気ではなく、人から人へ広がる
と強く認識するようになります。
インフルエンザは、
感染症という概念を確立させた重要な病気
でもあったのです。
1918年:人類史上最悪のスペインかぜ

そしてインフルエンザは、
人類史最大級の悲劇を起こします。
1918年のスペインかぜです。
規模
- 感染:約5億人
- 死亡:5000万〜1億人
- 世界人口の約3分の1が感染
第一次世界大戦の終盤に発生し、
兵士の移動によって一気に世界へ拡大しました。
なぜこれほど多くの人が亡くなったのか
最大の特徴は
若い健康な成人が大量に死亡した
ことです。
通常のインフルエンザは
高齢者が重症化しやすい病気です。
しかしスペインかぜでは
免疫が強い人ほど重症化
という異常な現象が起きました。
免疫反応が暴走し、
肺を破壊してしまう
「サイトカインストーム」です。
さらに当時は
- 抗生物質なし
- 人工呼吸器なし
- ICUなし
多くの患者が肺炎で亡くなりました。
1957年・1968年:繰り返される新型インフルエンザ
20世紀後半にもパンデミックは続きます。
1957年:アジアかぜ
H2N2型が出現し、
世界で約100万人が死亡。
1968年:香港かぜ
H3N2型が出現し、
現在の季節性インフルエンザの一部となっています。
この頃にはワクチンが開発され、
死亡率は大きく低下しました。
それでもなお
世界規模の流行は止められませんでした。
2009年:新型インフルエンザ

記憶に新しいのが2009年の新型インフルエンザです。
豚由来H1N1が出現し、
世界中に拡大しました。
幸い致死率は高くありませんでしたが、
- 若年層中心に感染
- 学校閉鎖
- 社会的混乱
などが起きました。
ここで改めて
インフルエンザは現代でも脅威である
と認識されたのです。
なぜインフルエンザは消えないのか?

最大の理由は
ウイルスが極めて変異しやすいことです。
小さな変異(抗原変異)
毎年少しずつ変わるため、
免疫が効きにくくなる。
大きな変異(抗原シフト)
鳥や豚のウイルスと混ざり、
全く新しい型が誕生する。
つまり
完全に根絶することがほぼ不可能
なのです。
現代医療は奇跡的に進歩した

歴史を振り返ると、
現代の医療は驚くほど進歩しています。
- ワクチン
- 抗インフルエンザ薬
- 集中治療
- 人工呼吸器
- ECMO
これらがあることで、
かつて数千万人を奪った感染症は
制御可能な病気となりました。
しかし新型が出現すれば、
再び世界的流行が起こる可能性はあります。
まとめ:インフルエンザは人類と共に生きてきた
インフルエンザは
- 少なくとも2000年以上前から存在
- 中世から世界的流行を繰り返す
- 1918年には数千万人が死亡
- 今も変異し続けている
つまり
人類と共に歴史を歩んできた感染症
です。
冬に熱が出たとき、
「またインフルか」と思うかもしれません。
しかしその背後には、
何世紀にもわたる人類の戦いがあります。
ワクチンや手洗いといった基本的な対策は、
人類が長い時間をかけて学んできた
知恵の結晶なのです。
インフルエンザの歴史を知ることは、
感染症とどう向き合うかを考えることでもあります。
今年の冬、流行のニュースを見たとき、
少しだけ思い出してみてください。
私たちは今も、歴史ある感染症と
静かに戦い続けている最中なのだと。KOY
KOYblog:タミフルって安全?、インフルエンザとインフルエンサーって違う??、インフルエンザで手術は中止?、インフルエンザ2025