
「長生きの秘訣」と検索すると、
食事、運動、睡眠、ストレス管理——
さまざまな情報があふれています。どれも間違ってはいませんし、医学的にも理にかなっています。
しかし外科医として日々診療をしていると、
「教科書通りに生きているわけではないのに、なぜか元気に長生きしている人」
に数多く出会います。
手術室、病棟、外来。
そこで私が見てきたのは、検査データや論文の数字だけでは語れない、**“長生きする人に共通する空気感”**のようなものです。
それは必ずしも完璧な健康生活ではなく、むしろ「病気との付き合い方」や「日常の姿勢」に表れていることが多いと感じています。
この記事では、一般的な長生き論をなぞるのではなく、
**外科医として実際に患者さんを診て、手術をして、経過を追ってきた中で感じた“リアルな長生きの秘訣”**を、私なりの視点で紹介します。
第1章:検診をしっかり受ける

外科医として「長生きする人」に共通していることを一つ挙げるとすれば、
定期的に検診を受けているという点です。
「検診でがんが見つかるのが怖い」
そう感じる方は少なくありません。
ですが、私たち外科医の立場からすると、検診で見つかるがんほど治しやすいのが現実です。
検診で発見されるがんは、多くの場合、
- まだ小さい
- 症状が出ていない
- 他の臓器に広がっていない
といった早期の段階であることが多くなります。
早期に見つかれば、
手術は短時間で済み、体への負担も最小限です。
術後の回復も早く、普段通りの生活に戻れるケースを何度も見てきました。
一方で、検診を受けず、症状が出てから見つかるがんは、
すでに進行していることが少なくありません。
「もっと早く見つかっていれば」と感じる場面も、決して珍しくありません。
検診は、病気を探すためのものではなく、
手遅れを防ぐためのものです。
長生きしている人ほど、病院を避けるのではなく、
自分の体を知るために上手に利用しています。
年に一度でも検診を受けることは、
未来の自分を守るための、大切な習慣だと感じます。
第2章:生活習慣病をしっかりコントロール

外科医として日々診療していると、
生活習慣病がきちんとコントロールされているかどうかは、
その人の将来を大きく左右すると強く感じます。
高血圧、糖尿病、脂質異常症。
これらはすぐに命に関わる病気ではないため、
つい軽く考えられがちです。
しかし、手術の現場では話が変わります。
生活習慣病がうまくコントロールされていない方ほど、
手術後の合併症が起こりやすく、回復にも時間がかかる傾向があります。
一方で、
「薬をきちんと飲んでいる」
「定期的に通院している」
こうした方は、年齢のわりに体力が保たれていることが多く、
術後の経過も安定している印象があります。
大切なのは、完璧を目指すことではありません。
数値をゼロに近づけることよりも、
放置しないこと、自己判断で治療をやめないことが重要です。
生活習慣病は、うまく付き合えば怖い病気ではありません。
むしろ、きちんとコントロールできている人ほど、
年を重ねても大きなトラブルなく過ごせていると感じます。
長生きする人は、
「年だから仕方ない」と諦めるのではなく、
自分の体と現実的に向き合っています。
それが結果として、寿命を延ばすことにつながっているのではないでしょうか。
第3章:よく笑う

「よく笑うことが長生きにつながる」
一見すると、医学的には少し曖昧な話に聞こえるかもしれません。
しかし外科医として多くの患者さんを診てきた中で、
よく笑う人ほど全体的に元気で、治療にも前向きだと感じる場面は少なくありません。
興味深い話として、
お笑い芸人、とくに吉本興業の芸人さんには「がんが少ないのではないか」と言われることがあります。

もちろん職業だけで病気の有無が決まるわけではありませんが、
日常的に笑い、笑わせ、強いストレスを発散している環境が、
心身に良い影響を与えている可能性は十分考えられます。
入院中の患者さんを見ていても、
家族や医療スタッフとよく会話し、冗談を言い合える方は、
表情が明るく、回復も早い傾向があります。
逆に、笑顔が少なく、孤立している方ほど、
治療への意欲が下がり、体力の回復にも時間がかかる印象があります。
「笑うこと」は、特別な才能がなくてもできます。
誰かと話す、好きな番組を見る、
お笑いのビデオや動画を意識的に見るのも一つの方法です。
実際、医療の現場でも
笑いやリラックスがストレスを和らげ、免疫機能に良い影響を与える可能性が指摘されています。
長生きする人は、
病気があっても、人生そのものを楽しむ力を持っています。
その中心にあるのが、「よく笑う」という、とてもシンプルで続けやすい習慣なのだと思います。
第4章:乳製品を定期的に摂取する

外科医として高齢の患者さんを診ていると、
栄養状態、とくに骨と筋肉の状態がその後の人生を大きく左右すると感じます。
年齢を重ねると、どうしても食事量が減り、
カルシウムやたんぱく質が不足しがちになります。
その結果、骨が弱くなり、転倒や骨折のリスクが高まります。
骨折そのものは命に関わらなくても、
そこから
「入院 → 動けない → 体力低下 → 寝たきり」
という流れに入ってしまう方を、私たちは何度も見てきました。
こうした悪循環を防ぐうえで、
乳製品はとても効率の良い食品です。
牛乳、ヨーグルト、チーズには、
骨を保つためのカルシウムだけでなく、
筋肉を維持するためのたんぱく質も含まれています。
「たくさん飲む必要はありません」
毎日コップ一杯の牛乳や、ヨーグルトを一つ。
それだけでも、長い目で見ると大きな差になります。
実際、長生きしている方の食生活を聞くと、
「毎朝ヨーグルトを食べている」
「牛乳は欠かさない」
といった声をよく耳にします。
乳製品を摂ることは、
骨折を防ぎ、動ける時間を延ばすことにつながります。
“長生き”だけでなく、“自分の足で生活できる期間を延ばす”
そのための、シンプルで続けやすい習慣だと感じます。
第5章:やりがいを見つける

長生きしている人を見ていると、
多くの方に共通しているのが、何かしらの「やりがい」を持っているという点です。
それは、決して大きな目標である必要はありません。
仕事、趣味、家庭菜園、孫の世話、地域活動。
「自分はまだ役に立っている」と感じられる場がある人ほど、
年齢を重ねても驚くほど元気です。
外科医として診療をしていると、
同じ病気、同じ手術を受けても、
その後の回復や生活の質には大きな差が出ることがあります。
その差を分けるものの一つが、
**「この先もやりたいことがあるかどうか」**だと感じます。
やりがいがある人は、
リハビリにも前向きで、治療への理解も深く、
「元の生活に戻りたい」という意欲がはっきりしています。
反対に、やることがなく、
一日の中で楽しみが見つからない状態が続くと、
心も体も少しずつ元気を失っていく印象があります。
やりがいは、探そうと思って見つかるものばかりではありません。
「これなら続けられそう」
「これをやると気分がいい」
そんな小さなことからで十分です。
長生きする人は、
年齢に関係なく、明日を楽しみにしています。
やりがいを持つことは、生きる力そのもの。
それが結果として、寿命を延ばしているのではないでしょうか。
まとめ
長生きの秘訣というと、
特別な健康法や厳しい自己管理を想像する方も多いかもしれません。
しかし、外科医として多くの患者さんを診てきた中で感じるのは、
長生きしている人ほど、実はとても現実的な生き方をしているということです。
定期的に検診を受け、
生活習慣病をきちんとコントロールし、
よく笑い、食べることを大切にし、
自分なりのやりがいを持ち、
そして、少し肩の力を抜いて生きている。
どれも特別なことではありません。
けれど、これらを長く続けられている人は、
結果として病気を早く見つけ、回復し、
自分らしい生活を保ちながら年齢を重ねています。
大切なのは、「完璧な健康」を目指すことではなく、
病気や老いと上手に付き合いながら、生きる時間を延ばすことだと感じます。
今日からすべてを変える必要はありません。
検診を一つ予約してみる。
よく笑う時間を意識して作る。
少しだけ自分に優しくなる。
その小さな積み重ねが、
未来の自分を守る力になります。
KOY
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