
夜中、足の親指の付け根がズキッ。次の瞬間、「え、これ骨折した?」と思うくらいの激痛で目が覚める——。
痛風発作を経験した人が口をそろえて言うのは、「人生でトップクラスに痛い」ということです。靴下が触れるだけでもつらい、布団の重みさえ敵に回る。痛みって、ここまで人を真面目にさせるんだ…と妙に感心するほど。
そんな痛風には、昔から有名な別名があります。
それが 「王様の病気(贅沢病)」。
でも、「王様の病気」という言葉には、ちょっとした誤解も含まれています。そして同時に、痛風の本質をつく“面白くてためになる”背景も詰まっています。今回は、痛風がなぜそう呼ばれたのか、そして昔の人が痛風の痛みをどう表現したのか——歴史とエピソードを交えて、読み物として楽しめる形で紹介します。
エピソード①:痛風は本当に「王様の病気」だったのか?

結論から言うと、痛風が「王様の病気」と呼ばれたのは、わりと理にかなっています。
昔の時代、肉・魚・甘いお菓子・お酒を“安定して”口にできるのは、基本的に上流階級だけでした。
冷蔵庫も物流網もない時代に、いつでも栄養豊富な食事が手に入るのは、王侯貴族や富裕層の特権。つまり痛風は、「体質」だけでなく「環境」でも選ばれてしまう病気だったわけです。
ここで大事なのは、痛風の原因が「贅沢」そのものというより、豊かな食生活・飲酒・体重増加・脱水といった条件が重なりやすかった、という点です。
当時は「贅沢=正義」みたいな空気もあったでしょうから、まさか贅沢のツケが足の親指に来るなんて、誰も想像していなかったかもしれません(しかも夜中に)。
ただし、この話には続きがあります。
現代はどうでしょう。コンビニ、外食、デリバリー、甘い飲み物、夜食、そして“仕事終わりの一杯”。
生活の便利さは、ある意味で私たちを全員「ミニ王様」にしてくれました。
つまり痛風は、身分の病気から、生活の病気へと変化したとも言えます。
この変化が面白いのは、「王様の病気」という言葉が、今ではちょっとブラックジョークになるところです。
昔は王様だけが手にできた生活が、今では誰でもできる。だからこそ、痛風は身近になった。
……うれしいような、うれしくないような。
でも、ここで前向きなポイントがあります。
生活が原因の一部なら、生活を整えることでコントロールもしやすい。痛風は「運命」だけで決まる病気ではありません。できる範囲から対策していけば、再発を減らすことは十分に可能です。
エピソード②:痛風の痛みは、なぜ“詩的”に語られるのか?

痛風のもう一つの面白いところは、痛みの表現が昔からやたらと強烈なことです。
痛風の痛みは、よく「釘で打たれる」「焼けるよう」「刃物で刺される」といった比喩で語られます。しかも、表現がだいたい大げさ…というより、大げさに言わないと伝わらないタイプの痛みなんですよね。
これ、実は病態を知ると納得できます。
痛風は、尿酸が増えて結晶(尿酸塩結晶)になり、それが関節の中にたまることで起こります。結晶は“針”のような形で、免疫がそれを異物として攻撃すると、関節内で強い炎症が起きます。
要するに、関節の中で「針みたいな結晶」+「炎症の嵐」という状態になる。そりゃ痛い。たとえが物騒になるのも仕方ない。
昔の人にとって、痛みを説明する手段は「言葉」しかありません。レントゲンも血液検査もない時代、「見えない痛み」を人に理解してもらうには、比喩を全力で使うしかなかった。
だから痛風の記録は、時に文学作品のような迫力を帯びます。医療史というより、痛みのドキュメンタリー。読んでいるだけで足の親指がソワソワしてくるのが難点ですが…。
そしてこの“詩的な痛み表現”は、現代にも役立ちます。
痛風って、痛みが治まると「もう大丈夫」と思いがち。でも、結晶が体内に残っていると、条件がそろったときにまた炎症が起こります。
つまり痛風は、「痛くない時間」こそ勝負。
痛みのエピソードは怖いけれど、怖いからこそ、再発予防の大切さが伝わる——。これが痛風エピソードの良いところです。
まとめ:痛風は“昔話”じゃない。今こそ知っておく価値がある
痛風が「王様の病気」と呼ばれたのは、昔の上流階級が“痛風になりやすい条件”をそろえやすかったから。
そして痛風の痛みが、釘だの火だの刃物だのと過激に表現されてきたのは、関節内で強烈な炎症が起きる、説明しづらいほどの激痛だったから。
歴史の話として面白いだけでなく、痛風の本質をちゃんと映しています。
そして何より大事なのは、痛風は今や「王様だけの病気」ではなく、現代の生活の中で誰にでも起こり得るということ。
でも裏を返せば、生活を整えることでコントロールできる余地も大きい。
水分、体重、飲酒の量と頻度、甘い飲み物、食べ過ぎ——このあたりを“全部完璧に”じゃなくていいので、できるところから一つずつ。痛風は、こちらが現実的に動けば、ちゃんと現実的に落ち着いてくれます。
もしあなたが「尿酸が高いと言われた」「あの激痛をもう一度は嫌だ」と思っているなら、今日この記事を読んだのはかなり良いタイミングです。
王様の病気の歴史を笑い話にしつつ、次はあなたの足の親指を守る番。いきなり全部は無理でも大丈夫。小さく始めて、痛風に“夜中の奇襲”をさせない生活を作っていきましょう。