
この記事でわかること
・6月でも熱中症に注意が必要な理由
・熱中症の初期症状と危険なサイン
・水分補給、塩分、エアコン、服装の具体的な対策
・暑さ指数WBGTの見方
・日傘、ネッククーラー、冷却ファンなど最新対策グッズの使い方
・熱中症が疑われるときの応急処置と救急受診の目安
今年もこの季節がやって参りました。
6月中旬で、まだ夜は涼しい日が多いですがこれから寝苦しい日がやってくるでしょう。
病院にも熱中症の患者さんが増えてくる時期です。油断をすると年齢関係なく熱中症になってしまいます。
医師の立場から可能な限り情報をお届けいたします。
この記事を読んで少しでも対策に役立ててください!
著者情報:外科医/消化器外科医として臨床に従事。救急外来や入院診療で熱中症患者の診療経験あり。一般の方に向けて、医学情報をわかりやすく発信しています。
結論:6月の熱中症対策はこの5つ
- のどが渇く前に水分補給
- 汗をかいたら塩分も補う
- 室温28℃以下を目安にエアコンを使う
- WBGTを毎朝確認する
- 日傘・帽子・冷却グッズを活用する
- 1 第1章:「27.1℃を超えると死亡リスク上昇」――最新研究が示す”意外に低い”危険ライン
- 2 第2章:「まだ真夏じゃないから大丈夫」が危ない理由
- 3 第3章:熱中症は屋外だけではない――室内・夜間・高齢者で起こるリスク
- 4 第4章:なぜ体は暑さに負けるのか?医師目線で見る熱中症のしくみ
- 5 第5章:こんな症状は要注意――めまい、頭痛、だるさ、吐き気
- 6 第6章:今日からできる基本対策――水分、塩分、エアコン、暑さ指数の確認
- 7 第7章:熱中症対策グッズも進化中――日傘、ネッククーラー、冷却ファンを上手に使う
- 8 第8章:もし熱中症かもと思ったら――家でできる初期対応と救急要請の目安
- 9 まとめ:「暑くなってから」ではなく「暑くなり始め」から備えよう
第1章:「27.1℃を超えると死亡リスク上昇」――最新研究が示す”意外に低い”危険ライン

「熱中症で命を落とす危険があるのは、猛暑日(35℃以上)だけ」――そう思っている方は多いのではないでしょうか。
2026年6月19日、毎日新聞がある研究結果を報じました。日本国内のデータを分析したところ、日平均気温が27.1℃を超えると死亡リスクが有意に上昇するというのです。
(参照:毎日新聞 2026年6月19日付記事)
27.1℃という数字は、天気予報で「最高気温32℃」と報じられるような日に十分到達しうる日平均気温です。つまり、猛暑日でなくても、私たちの体には確実にダメージが蓄積されているということになります。
この研究が注目に値するのは、「死亡リスクが上がり始める温度は、多くの人が想像するよりもずっと低い」 ということを、データで明確に示した点です。
医師の立場から言えば、これは臨床の実感とも一致します。救急外来に熱中症の患者さんが増え始めるのは、真夏のピークよりも前――まさに6月後半から7月前半にかけてです。体がまだ暑さに慣れていない時期こそ、最も警戒が必要なのです。
第2章:「まだ真夏じゃないから大丈夫」が危ない理由

「6月なんて、まだ夏本番じゃないでしょう?」
患者さんからよく聞く言葉です。しかし、熱中症の観点から言えば、この認識は大きな落とし穴になります。
暑熱順化(しょねつじゅんか)が追いついていない
人間の体は、暑い環境に繰り返しさらされることで、少しずつ適応していきます。これを**暑熱順化(しょねつじゅんか)**と呼びます。具体的には、以下のような変化が起こります。
- 汗をかき始めるタイミングが早くなる
- 汗の量が増え、効率的に体温を下げられるようになる
- 皮膚の血管が拡張しやすくなり、放熱しやすくなる
- 汗に含まれる塩分濃度が下がり、電解質の喪失が抑えられる
この順化には、通常1〜2週間かかります。つまり、6月に急に気温が上がった日には、体はまだ「夏仕様」に切り替わっていないのです。
「前日との気温差」が体に響く
6月は気温の変動が大きい月でもあります。前日が22℃だったのに翌日は30℃を超える、ということも珍しくありません。この急激な温度上昇が、体にとっては大きなストレスになります。
実際、総務省消防庁の統計を見ると、熱中症による救急搬送は梅雨の合間に気温が急上昇するタイミングで急増する傾向があります。
油断が最大のリスク要因
真夏であれば、多くの人が水分補給やエアコンの使用を意識します。しかし6月は「まだ大丈夫」という油断から、十分な対策を取らない人が少なくありません。
- 「エアコンはまだ早い」と我慢する
- 普段どおりの服装で外出する
- 水分補給を意識しない
この油断こそが、6月の熱中症を深刻化させる最大の要因です。
第3章:熱中症は屋外だけではない――室内・夜間・高齢者で起こるリスク

「熱中症は、炎天下で運動している人がなるもの」というイメージも根強いですが、実態はかなり異なります。
室内での熱中症が多い
東京都監察医務院の調査によれば、熱中症で亡くなった方のうち、約7〜8割は室内で発症しています。しかも、そのうちの多くがエアコンを使用していなかったケースです。
特に以下のような環境は危険です。
- 窓を閉め切った部屋
- 西日が当たる部屋
- 上階(熱が上にたまるため、2階以上は要注意)
- 風通しの悪いワンルーム
夜間の熱中症
気温が下がりにくい都市部では、夜になっても室温が30℃を超えたままということがあります。就寝中は水分補給ができないため、脱水が進みやすく、朝になって体調不良で目覚める、あるいは最悪の場合そのまま意識を失うケースもあります。
寝る前にコップ一杯の水を飲む。寝室のエアコンを28℃程度に設定してつけたまま寝る。この2つは、夜間の熱中症予防の基本です。
高齢者のリスクが突出して高い
熱中症による死亡者の約8割は65歳以上の高齢者です。その理由は複合的です。
- 暑さを感じにくい:加齢により温度感覚が鈍くなり、「暑い」と自覚しにくくなります
- のどの渇きを感じにくい:脱水が進んでいても、渇きを自覚しないことがあります
- 発汗機能の低下:汗をかく力が弱まり、体温調節がうまくいきません
- 基礎疾患の影響:心臓や腎臓の持病、利尿薬の服用なども脱水リスクを高めます
高齢のご家族がいる方は、「暑くない?」「水飲んだ?」という声かけを習慣にしてください。本人が「大丈夫」と言っていても、体はすでに限界に近いことがあります。
第4章:なぜ体は暑さに負けるのか?医師目線で見る熱中症のしくみ

熱中症を正しく予防するためには、体の中で何が起きているのかを知っておくことが大切です。少し専門的な内容になりますが、できるだけわかりやすく説明します。
体温調節の2つの柱
人間の体は、深部体温(体の芯の温度)を約37℃に保つようにできています。その調節を担っているのが、次の2つのしくみです。
- 皮膚血管の拡張:皮膚の血管を広げて、血液を通じて熱を体表面に運び、外に逃がします
- 発汗:汗が蒸発するときに体の表面から熱を奪います(気化熱)
この2つがうまく機能している間は、体温は正常に保たれます。
破綻が起こるメカニズム
ところが、暑さが体の放熱能力を超えると、以下のような悪循環が始まります。
ステップ1:大量発汗による脱水 → 体内の水分と塩分(ナトリウムなど)が失われます。
ステップ2:循環血液量の低下 → 脱水により血液の量が減り、心臓が全身に十分な血液を送れなくなります。血圧が下がり、めまいや立ちくらみが起こります。
ステップ3:体温調節の破綻 → 血液が足りなくなると、皮膚への血流も汗の材料も不足し、体温を下げられなくなります。深部体温が40℃を超えると、臓器にダメージが及び始めます。
ステップ4:多臓器不全 → 高体温が持続すると、脳・肝臓・腎臓・筋肉などに障害が広がり、最悪の場合は命に関わります。
湿度の影響を見落とさない
気温がそれほど高くなくても、湿度が高いと汗が蒸発しにくくなります。汗が蒸発しなければ気化熱による体温低下が起こらないため、体温が下がりません。
6月の梅雨時期は、気温はそこまで高くなくても湿度が80〜90%に達することがあります。「気温28℃・湿度85%」は、「気温33℃・湿度50%」と同等以上の熱中症リスクになりえます。
だからこそ、気温だけでなく**「暑さ指数(WBGT)」**を確認することが重要です(詳しくは第6章で触れます)。
第5章:こんな症状は要注意――めまい、頭痛、だるさ、吐き気

熱中症は、早い段階で気づいて対処すれば重症化を防げます。しかし、初期症状は「ちょっと疲れただけ」と見過ごされやすいのが厄介です。
重症度別の症状
| 重症度 | 主な症状 | 対応 |
|---|---|---|
| I度 | めまい、立ちくらみ、こむら返り | 涼しい場所へ移動、水分・塩分補給 |
| II度 | 頭痛、吐き気、だるさ | 改善しなければ医療機関へ |
| III度 | 意識障害、けいれん、高体温 | すぐ119番 |
「いつもと違う」が大事なサイン
医師として強調したいのは、「なんとなくいつもと違う」という感覚を無視しないでほしいということです。
- 普段は元気なのに、やたらとだるい
- 頭がぼんやりして、考えがまとまらない
- 暑いのに汗が止まった(※これは危険サイン。体の水分が枯渇しています)
- 尿の色が濃くなった、トイレの回数が減った
こうした変化に気づいたら、まずは作業や運動を中断し、涼しい場所で休みましょう。
周囲の人が気づくべきポイント
本人は「大丈夫」と言っていても、以下のような様子が見られたら要注意です。
- 顔色が赤い、または逆に真っ青
- 受け答えがおかしい、ろれつが回らない
- まっすぐ歩けない、ふらつく
- ぐったりして力が入らない
特に、受け答えがおかしい場合は迷わず救急車を呼んでください。脳への影響が出ている可能性があります。
第6章:今日からできる基本対策――水分、塩分、エアコン、暑さ指数の確認

水分補給のコツ
「のどが渇いてから飲む」では遅いのが熱中症の水分補給です。
- こまめに少しずつ飲む(1回200ml程度、1日を通して1.2〜1.5リットルが目安)
- 作業中・運動中は15〜20分ごとにひと口
- 汗をたくさんかいたときは、水だけでなく塩分も一緒に(スポーツドリンクや経口補水液)
- アルコールやカフェインの大量摂取は利尿作用があるため逆効果
ただし、心臓や腎臓の持病がある方は水分摂取量に制限がある場合があります。主治医に相談のうえ、適切な量を守ってください。
エアコンを「我慢しない」
「電気代がもったいない」「まだ6月だから」と、エアコンの使用をためらう方がいます。しかし、室内で熱中症になり救急搬送されるコストと比べれば、エアコンの電気代ははるかに安いものです。
- 室温は28℃以下を目安に
- 扇風機やサーキュレーターを併用すると、体感温度を効率よく下げられます
- 就寝時も「おやすみモード」などを使って一晩中つけておくのが安全です
暑さ指数(WBGT)を毎日チェック
暑さ指数(WBGT:Wet Bulb Globe Temperature) は、気温だけでなく湿度や輻射熱も加味した指標で、熱中症のリスクをより正確に反映します。
- 環境省の「熱中症予防情報サイト」(https://www.wbgt.env.go.jp/)で、地域ごとのWBGTを確認できます
- WBGT 28以上は「厳重警戒」、31以上は「危険」です
- 天気予報アプリにもWBGTを表示するものが増えています。毎朝の習慣に取り入れましょう
服装と日常の工夫
- 通気性のよい素材、ゆったりした服を選ぶ
- 外出時は帽子や日傘で直射日光を避ける
- 保冷剤や濡れタオルを首に当てるだけでも効果あり
第7章:熱中症対策グッズも進化中――日傘、ネッククーラー、冷却ファンを上手に使う

近年、熱中症対策グッズの進化は目覚ましいものがあります。うまく活用すれば、外出時の暑さの負担を大きく軽減できます。
日傘:男性にもおすすめ
日傘を使うと、体感温度を3〜7℃程度下げる効果があるとされています。最近は男性向けのシンプルなデザインの日傘も増えており、性別を問わず使いやすくなりました。
選ぶ際のポイントは以下のとおりです。
- UVカット率99%以上、遮光率99%以上のものを選ぶ
- 内側が黒いもの(地面からの照り返しを吸収する)
- 晴雨兼用なら梅雨時期にも一本で済む
ネッククーラー
首には太い血管(頸動脈)が通っているため、首を冷やすと効率的に体温を下げることができます。
- PCM素材タイプ:28℃前後で自然に凍結し、繰り返し使えるもの。冷えすぎず快適
- 電動ペルチェ式:バッテリーで冷却するタイプ。即効性がある
- 保冷剤タイプ:手軽で安価。冷凍庫で冷やして使う
通勤や買い物、子どもの送迎など、短時間の外出でも使う価値があります。
ハンディファン・冷却ファン
携帯型の扇風機も定番になりました。ただし、気温35℃以上の環境では、熱風を顔に当てることになり逆効果になる場合があります。
- 気温35℃未満であれば有効
- ミスト機能付きのタイプは気化熱で冷却効果が高い
- 汗をかいた肌に風を当てると体温低下の助けになる
グッズに頼りすぎない
対策グッズは補助手段であり、水分・塩分補給やエアコンの使用の代わりにはなりません。「ネッククーラーをしているから水を飲まなくて大丈夫」とは考えず、基本対策+グッズの組み合わせで備えましょう。
第8章:もし熱中症かもと思ったら――家でできる初期対応と救急要請の目安
まず行うべき3つのこと
熱中症が疑われたら、以下の応急処置をすぐに始めてください。
1. 涼しい場所へ移動する
- エアコンの効いた室内が最善
- 屋外であれば日陰や風通しのよい場所へ
2. 体を冷やす
- 衣服をゆるめ、体の表面から熱を逃がす
- 首・脇の下・太ももの付け根(太い血管が通っている場所)を集中的に冷やす
- 氷嚢、保冷剤、冷たいペットボトル、濡れタオルなどを活用
- 霧吹きで水をかけ、うちわや扇風機で風を当てると効果的
3. 水分・塩分を補給する
- 意識がはっきりしていて、自分で飲める場合に限る
- 経口補水液やスポーツドリンクが望ましい
- 意識がもうろうとしている人に無理に水を飲ませてはいけません(誤嚥の危険があります)
救急車を呼ぶべき場面
以下のいずれかに当てはまる場合は、ためらわず119番に通報してください。
- 呼びかけに反応しない、または反応がおかしい
- 自分で水分を摂ることができない
- 体が触って明らかに熱い
- けいれんを起こしている
- 応急処置をしても症状が改善しない
救急車を待つ間も、体を冷やし続けることが重要です。「冷やしすぎ」を心配する必要はありません。熱中症の重症例では、1分でも早く体温を下げることが生死を分けます。
医療機関を受診すべき場面
救急車を呼ぶほどではなくても、以下の場合は医療機関を受診してください。
- 頭痛や吐き気が休んでもおさまらない
- 大量の汗をかいた後、急に汗が止まった
- 尿が出ない、または極端に量が少ない
- 高齢者や持病がある方で、少しでも「おかしい」と感じた場合
「大げさかな」と思っても、受診してください。熱中症は「様子を見ているうちに急激に悪化する」ことがある疾患です。医師として、「来なくてよかったのに」と思うことは決してありません。
まとめ:「暑くなってから」ではなく「暑くなり始め」から備えよう
この記事でお伝えしたかったことは、大きく3つです。
1. 熱中症の危険は、猛暑日よりもずっと前から始まっている
日平均気温27.1℃で死亡リスクが上昇するという研究が示すとおり、私たちが思っている以上に低い気温で、体はすでにダメージを受け始めています。
2. 「室内だから安全」「夜だから安全」ではない
熱中症は場所も時間も選びません。特に高齢者の室内での発症が多く、エアコンの使用をためらうことが命に関わります。
3. 「いつもと違う」と感じたら、すぐに対処する
早い段階で涼しい場所へ移動し、水分・塩分を補給すれば、ほとんどの熱中症は重症化を防げます。「もう少し頑張ろう」が最も危険な判断です。
6月――梅雨の晴れ間に気温が跳ね上がるこの時期は、体が暑さに慣れていない分、真夏以上に注意が必要です。
今日から、水筒を持ち歩くこと。エアコンを我慢しないこと。暑さ指数をチェックすること。どれも小さなことですが、その積み重ねがご自身と大切な人の命を守ります。
「暑くなってから」ではなく、「暑くなり始め」の今こそ、備えるときです。
この記事は、医師の立場から一般の方に向けて執筆したものです。個別の医療相談については、かかりつけ医にご相談ください。
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参考文献・参考サイト
環境省 熱中症予防情報サイト
厚生労働省 熱中症関連情報
消防庁 熱中症による救急搬送状況
日本救急医学会 熱中症診療ガイドライン
東京都監察医務院の熱中症死亡例データ