桐谷広人さんが大腸がんを公表――大腸がんの治療はステージによってどう変わる?

テレビ番組『月曜から夜ふかし』などで知られ、「株主優待生活」でおなじみの桐谷広人さんが、前立腺がんと大腸がんの治療を受けていることを公表されました。

報道によると、前立腺がんの検査を進める中で大腸がんが見つかり、大腸の手術を受けた後、抗がん剤治療を予定しているとのことです。腸を約60cm切除したことも紹介されました。

元気に自転車で街を走る姿が印象的な方だけに、驚いた方も多いのではないでしょうか。

今回のニュースをきっかけに、ぜひ知っていただきたいのが、次の点です。

大腸がんの治療は、すべての患者さんで同じではありません。

がんの深さ、リンパ節転移、肝臓や肺への転移、発生した場所、年齢や体力などによって治療法は大きく変わります。大腸がんでは、内視鏡治療、手術、薬物療法、放射線治療などを単独または組み合わせて行います。

なお、桐谷さんの詳しいステージや病理検査の結果は公表情報だけでは分かりません。手術範囲や抗がん剤治療の有無だけで、ステージを推測することはできません。

大腸がんの治療は何で決まる?

大腸がんは、大腸の内側にある粘膜から発生します。

進行すると、腸の壁の深い部分へ入り込み、リンパ節、肝臓、肺、腹膜などへ広がることがあります。

治療法を決める主なポイントは次の4つです。

確認すること内容
がんの深さ大腸の壁のどこまで入り込んでいるか
リンパ節転移周囲のリンパ節へ広がっているか
遠隔転移肝臓や肺などへ転移しているか
全身状態年齢、体力、持病、本人の希望など

これらを総合して、がんの「ステージ」と治療方針が決められます。

ステージごとの治療の目安

ステージ主な状態治療の目安
ステージ0がんが粘膜内にとどまる内視鏡治療
ステージIがんが浅い範囲にとどまり、リンパ節転移なし内視鏡治療または手術
ステージIIがんが腸の壁の深い部分まで進むが、リンパ節転移なし手術が中心
ステージIII周囲のリンパ節に転移がある手術+術後抗がん剤
ステージIV肝臓、肺、腹膜などに転移がある薬物療法、手術などを組み合わせる

これはあくまで大まかな目安です。

同じステージでも、がんの場所や遺伝子の特徴、患者さんの体力によって治療法は変わります。

特にステージIVでも、肝臓や肺への転移が限られており、すべて切除できる場合には、手術によって根治を目指せることがあります。

大腸がんの4つの治療法

1.内視鏡的切除

おなかを切らずに、内視鏡でがんを取る治療

早期の大腸がんでは、大腸カメラを使って切除できることがあります。

主な方法特徴
ポリペクトミー輪状の器具をかけてポリープを切除
EMR病変を液体で浮かせて切除
ESD専用ナイフで病変を一括切除

内視鏡治療は、おなかに傷が残らず、腸を温存できる点が大きなメリットです。

ただし、早期がんであればすべて内視鏡で治療できるわけではありません。

内視鏡治療が検討される条件

  • がんが比較的浅い
  • リンパ節転移の可能性が低い
  • 内視鏡で安全に切除できる

切除した組織を顕微鏡で調べ、予想以上に深く入り込んでいた場合や、リンパ管・血管への侵入が認められた場合には、追加の手術が必要になることがあります。

2.手術

がんのある腸と周囲のリンパ節を切除する

内視鏡では取り切れない深さまでがんが入り込んでいる場合は、手術が中心になります。

手術では、がんだけをくり抜くのではありません。

主に切除するもの

  • がんのある大腸
  • がんの周囲にある正常な腸
  • 転移する可能性のあるリンパ節

切除後は、残った腸同士をつなぎ直します。

病変の場所や患者さんの状態によっては、一時的または永久的な人工肛門が必要になる場合もあります。

手術方法特徴
腹腔鏡手術小さな穴からカメラと器具を入れる
ロボット支援手術ロボットを操作して精密に手術する
開腹手術おなかを大きく開けて手術する

現在は腹腔鏡手術が広く行われていますが、がんの進行状態、腸閉塞、過去の手術歴などによっては開腹手術が適していることもあります。

重要なのは傷の大きさではなく、がんを安全に、確実に切除できるかどうかです。

「腸を60cm切除した」=進行がん?

桐谷さんについては、腸を約60cm切除したと報じられています。

この数字だけを見ると、

「かなり大きながんだったのでは?」

と思うかもしれません。

しかし、切除する腸の長さは、がんの大きさだけで決まるわけではありません。

切除範囲を決める要素
がんができた場所
大腸に流れる血管の位置
切除すべきリンパ節の範囲
腸を安全につなぐために必要な長さ

そのため、腸を長く切除したからステージが高いとは限りません。

最終的なステージは、手術で切除したがんやリンパ節を病理検査で詳しく調べて決まります。

3.抗がん剤治療

抗がん剤には2つの大きな目的がある

「抗がん剤治療を受ける」と聞くと、すぐに末期がんを想像する方がいます。

しかし、それは正しくありません。

抗がん剤を行う目的内容
再発予防手術後に残っている可能性がある微小ながん細胞を減らす
進行・再発がんの治療がんを小さくし、進行を抑える

手術後の抗がん剤

リンパ節転移のあるステージIIIでは、手術後に抗がん剤治療を行うことが一般的です。

ステージIIでも、再発リスクが高いと判断された場合には、抗がん剤治療が検討されます。

つまり、手術後に抗がん剤を受けるからといって、必ずしも遠隔転移があるとは限りません。

進行・再発大腸がんの薬物療法

手術だけですべてのがんを取り切れない場合には、薬物療法が中心になります。

目的は、

  • がんを小さくする
  • 進行を抑える
  • 症状を和らげる
  • 生活の質を保つ

ことです。

薬物療法によってがんが小さくなり、その後に手術できるようになる場合もあります。これをコンバージョン手術と呼びます。

大腸がんは「遺伝子を調べて薬を選ぶ」時代へ

進行・再発大腸がんでは、がんの遺伝子や分子の特徴を調べて治療薬を選ぶことがあります。

主な検査治療選択との関係
RAS一部の分子標的薬が効く可能性を判断
BRAFがんの特徴や使用する薬を検討
MSI・MMR免疫療法が効く可能性を判断

同じ大腸がんでも、患者さんごとに適した薬は異なります。

現在は従来の抗がん剤に加え、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬などを組み合わせることがあります。

4.放射線治療

主に直腸がんで使用される

大腸がんは、大きく結腸がんと直腸がんに分けられます。

放射線治療は、特に直腸がんで検討されることがあります。

放射線治療の目的内容
手術前の治療がんを小さくし、骨盤内再発を抑える
手術との併用肛門を残せる可能性などを検討する
症状の緩和転移による痛みや出血などを和らげる

進行した直腸がんでは、手術前に抗がん剤と放射線治療を組み合わせることがあります。

ただし、すべての直腸がんに放射線治療を行うわけではありません。

がんの位置、肛門との距離、深さ、リンパ節転移などを確認し、必要性を判断します。

治療法は「4つの中から1つを選ぶ」とは限らない

大腸がんの治療は、単純な四択ではありません。

よくある治療の組み合わせ

病状治療例
非常に早期のがん内視鏡治療
内視鏡治療後に追加リスクあり内視鏡治療+手術
リンパ節転移あり手術+抗がん剤
進行直腸がん抗がん剤・放射線治療+手術
肝臓や肺への転移あり薬物療法+転移巣の手術
切除困難ながん薬物療法で縮小後に手術を検討

複数の治療を組み合わせることを「集学的治療」と呼びます。

現在の大腸がん治療では、外科、消化器内科、腫瘍内科、放射線治療科などが連携して、患者さんごとの治療方針を考えます。

元気でも、大腸がんは否定できない

桐谷さんは、テレビでも自転車で元気に移動する姿が印象的でした。

しかし、

元気に動けることと、がんがないことは同じではありません。

大腸がんは、早期にはほとんど症状がないことがあります。

大腸がんでみられる主な症状

症状注意したいこと
血便痔と自己判断しない
便が細い腸が狭くなっている可能性
便秘や下痢便通の変化が続く場合は受診
貧血・息切れ少量の出血が続いている場合がある
腹痛・おなかの張り腸閉塞などの可能性
体重減少原因不明なら検査が必要

これらの症状があっても、必ず大腸がんというわけではありません。

しかし、症状が続く場合には、健診を待たずに医療機関を受診してください。

40歳を過ぎたら、年に1回の便潜血検査を

症状のない人が大腸がんを早期発見するために重要なのが、大腸がん検診です。

大腸がん検診の基本

対象検査
40歳以上の男女年1回の便潜血検査
便潜血陽性大腸内視鏡検査
血便などの症状がある検診ではなく医療機関を受診

便潜血検査が陽性でも、必ず大腸がんというわけではありません。

痔やポリープ、腸の炎症などでも陽性になることがあります。

しかし、原因を便潜血検査だけで判断することはできません。

陽性になったときの注意

  • 痔の出血だと自己判断しない
  • 2回中1回だけ陽性でも放置しない
  • 便潜血検査をやり直して済ませない
  • 大腸内視鏡検査を受ける

まとめ

桐谷広人さんのニュースをきっかけに、大腸がん治療について紹介しました。

大腸がん治療のポイント

治療主な対象
内視鏡治療リンパ節転移の可能性が低い早期がん
手術内視鏡では取り切れないがん
抗がん剤治療再発予防、進行・再発がん
放射線治療主に進行直腸がんや症状緩和

大腸がんの治療は、ステージだけでなく、発生部位、病理検査、遺伝子検査、年齢、体力、患者さん本人の希望などによって決まります。

そして、治療の選択肢を増やすために最も大切なのは、早期発見です。

「元気だから大丈夫」ではなく、元気なうちに検診を受ける。

40歳を過ぎたら、年に一度の便潜血検査を受けましょう。

便潜血検査が陽性だった場合には、症状がなくても大腸内視鏡検査を受けてください。

桐谷さんが治療を乗り越え、再び元気に自転車で街を走る姿を見せてくださることを願っています。

(内部リンク)

東野圭吾さん、大腸がんで死去 ― 「大腸がん」とは?症状・生存率・予防法をわかりやすく解説

(※この記事は、大腸がんに関する一般的な医療情報を紹介するものです。実際の治療方法は患者さんごとに異なります。治療については、担当の消化器内科医、消化器外科医、腫瘍内科医などにご相談ください。)